推理小説 著:秦建日子 | 105円読書

推理小説 著:秦建日子

推理小説

秦建日子:著
河出書房新社 ISBN:4-309-01686-3
2004年12月発行 定価1,680円(税込)









TVドラマの脚本家として活躍する著者が初めて書いた小説だとか…。ズバリ「推理小説」なんて、デビュー作にして、恐ろしく大胆なタイトルをつけたものである。カバーに、業界のお付き合いか…俳優・阿部寛の推薦文なんか載っていたりするのだが…TV業界人が書いた小説というのが、嫌な予感。

なんの面識もない女子高生とサラリーマンが…同時刻、同じ現場で殺された。現場には「アンフェアなのは、誰か」と書かれた、本の栞が落ちていた。これは犯人からのメッセージなのか?そんな中…文学賞の受賞パーティーで出版社の編集者が殺され、同じような栞が発見された。これは連続殺人なのか?そんななか…犯人と思われる人物から「推理小説 上巻」という小説が、警察と出版社宛に送られてきて、中には実際の事件の様子が詳細に記載されていた。さらに次の事件の予告まで書かれている始末。さらに…「事件を防ぎたければ小説の続きを落札せよ」というメッセージが犯人から言い渡されるのだった。

確かに脚本家という職業なので…ストーリーのアイデアは面白いところをついてきていると思うのだが、やはり文章に魅力が感じられない。前に読んだTVの放送作家が書いた「プレイヤーズ」というSF小説同様、やたらとセックスを連想させる言葉を使えば、読者が喜ぶと勘違いした節が強く感じられる部分があり、不必要に下品な言葉を比喩に使うのが好ましくない。また…本職の推理作家という職業の人たちへの敵意が感じられる内容。それを越える作品が書けるのは自分だと誇示する犯人が、そのまま作者自身に当てはまるのではないだろうか?作家デビューというものに拘りすぎている。

文章の構成などは読者を挑発してやろうと、やたらと複雑に計算し尽くされているのがわかりますね。騙してやろうという悪意がにじみ出ているというか。ドラマなどで培ったテクニックなのかな?

出版業界、推理作家…さらに読者をも挑発しようとしている姿勢はいいと思うが…デビュー作一発目にこれを持ってくるのは、ちっと荷が重すぎたのではないだろうか?キャラクターなどが、やっぱり薄っぺら。それこそ、ドラマの脚本を読んでいるような感じだった。きちっとした演出家が映像化したら、浅野温子あたりが似合いそうな女刑事ものの、いいドラマになると思いますよ。






個人的採点:55点