名探偵 木更津悠也 著:麻耶雄嵩 | 105円読書

名探偵 木更津悠也 著:麻耶雄嵩

名探偵 木更津悠也

麻耶雄嵩:著
光文社 ISBN:4-334-07564-9
2004年5月発行 定価860円(税込)









最近、忙しくて本を読むペースが落ちているのだが、そろそろ元に戻したいと思い、手始めに麻耶雄嵩の短編集を選んでみた。相変わらず本格色が濃厚で、シンプルなタイトル同様、シンプルに謎解きを楽しめる作品になっているので…スラスラと読めた。4編の独立した短編だが…全ての事件に“白幽霊”という、巷で噂になっている幽霊騒動が絡んでくる。

白幽霊
白い幽霊が出ると噂される邸宅地にある洋館、戸梶邸で起きた殺人事件。遺産絡みで、もめる親族たちは、誰もが鉄壁のアリバイがあった。たまたま路地を歩いていた通行人が目撃した、犯人の奇怪な行動が示すものはいったい何なのか?

アリバイ崩しがメインになってくるのだが…トラベルミステリーのような凄いトリックが出てくるわけでもない。やや物足りなさを感じるか?

禁区
噂の“白幽霊”が…一年前に失踪した友人ではないかと、興味本位で正体を暴こうとした文芸部の生徒たち。彼女たちが見たのは友人とは全く関係のない幽霊の姿だった!?その後、幽霊の呪いに脅える仲間の1人が部室で殺されているのが見つかった。

基本的にはワトソン役の作家・香月からの視点で木更津悠也の活躍を描く一人称なのだが…この作品の導入部は、わりと長めに事件の当事者である高校生たちを三人称で描いているのが…他と違った印象を受けた(白幽霊でも、最初の1、2ページ、ちょこっとそういう書き方をしていたが)。

交換殺人
酔った勢いで、見ず知らずの相手と交換殺人の約束をしてしまった男。自分が殺すはずの男が偶然にも殺されてしまったことから…自分が相手に伝えた殺して欲しい相手…つまり妻が、交換殺人によって本当に殺されてしまうのではないかと懸念した男は…名探偵木更津に、事件の解明を依頼した!

4編の中で一番面白かったかな。一見、ややこしそうに見えた事件も名探偵にかかれば…。

時間外返却
1年前に失踪した女子大生が白骨死体で見つかった。彼女は失踪する前にレンタルビデオを返却していたのだが…そのビデオテープから被害者の血が見つかった!?被害者の父親からの依頼で犯人探しを始める木更津だったが…更なる事件が…。

犯人と動機は意外だった…まさかね…。


“白幽霊”を匂わしておいて…ちゃんと事件は論理的に解決していくのが、本格推理小説らしくて気持ちがいいです。これといった大仕掛けな作品ではないのだが…推理小説としてかなりフェアなので、読んでいるこちらも充分に謎解きに参加できるし…木更津と香月のやり取りだけでも楽しめる。この間、アンソロジーで1編、麻耶雄嵩を読んだけど…ちゃんと読むのは久しぶりで、木更津と香月の関係とか半分くらい忘れてるんだけど、あまりその辺は深く考えなくても楽しめたので、他の作品を知らなくても楽しめると思う。でも、色々気になるので、後で過去の麻耶作品を引っ張り出してきてみるつもりだ。






個人的採点:70点