MONEY マネー 著:清水義範 | 105円読書
- MONEY マネー
清水義範:著
徳間書店 ISBN:4-19-861809-7
2004年2月発行 定価1,680円(税込)
現金強盗、誘拐事件など大きな犯罪から、主婦の万引き、小学生が考えたねずみ講など、チンケな犯罪まで…お金に関する犯罪ばかり扱った8つの短編小説。決してマネしないでください!という…MONEYにかけた宣伝文が帯に書いてありました(笑)
「東隆文の窃盗 8,600,000」
口八丁手八丁で仕事も女も借金も、上手に渡り歩くサラリーマンが…ローン返済の為にとった行動とは?
あの手、この手で…ローン返済をかわす術が面白いが…犯罪小説としてはちょっと物足りなく感じる物語だった。しかし、「東隆文の強盗」という続編が、ラストにあったので、その作品に対しての伏線だと考えると納得できるかもしれない。
「的場大悟の無限連鎖講 6,700」
キャラクター玩具ほしさに、小学生が考え付いたねずみ講まがいの犯罪…。
いまだに、ネット上でよく見かける“もうかります”という怪しい広告を思い浮かべた。“欲張るから損をする”…そんなおいしい話は、一部の人間を除いてほとんどないというのを…学ぶべきだよ。本当に徳をするのは、最初に悪巧みを考え付いたヤツだけだ。
「重松依子の万引き 3,480」
電話セールスのパートをこなす普通の主婦が万引きに走ってしまた理由とは?
なんで万引きしてしまったかというよりも…電話セールスの実態の方が、面白く描かれていた。
「桜田ナオの援助交際 50,000」
女子高生がバイト先の中年オヤジに…援助を申し込まれた!カラダを安売りしたくないけど5万は欲しい!
現代の女子高生の気持ちを描きながら…ちょっぴり中年のオヤジ世代を元気にさせる、ラブストーリー的な物語だった。
「ミスターXの誘拐 2,800,000」
工務店社長の孫が誘拐され…犯人から身代金の要求が!
オチはよめてしまったが…ようやく犯罪小説っぽいものが出てきたぞって感じだった。
「轟政嗣の借金 5,460,000」
事業の才能はないが、どうにか会社を維持することだけはできている中小企業の社長が…遂に闇金に手を出してしまったが、大逆転の秘策を思いついたのだった。
フィクションであり、実際には上手くいくわけないから闇金で悩んでる人は弁護士に相談しましょうという作者の注釈が一番笑えました。
「森本鉄太のおれおれ詐欺 10,000」
ひょんなことから手に入れた、一人暮らしの老人の名簿を使ってオレオレ詐欺を画策するのだが…。
最近は下火になってきたけど…世を騒がせたおれおれ詐欺を題材にした物語だ。簡単そうに見えても、犯罪者の方にもリスクが大きいというのを、面白おかしく描いてます。だから、おれおれ詐欺なんて辞めましょうね!
「東隆文の強盗 10,400,000」
信用金庫に勤めるガールフレンドから寝物語で聞き出した…現金輸送の情報が思わぬところで役立つ!
一番最初に収録されていた「東隆文の窃盗」の続編になる。トリに持ってくるだけあって、一番本格的な犯罪であり、小説としてスリリングな物語が展開され面白かった。
どれも日常の中でふとした瞬間に犯罪に手を染めてしまう、または巻き込まれてしまうというような物語ばかり。中にはオチが綺麗に決まって笑える作品もあるが、逆に…その犯罪に至るまでの日常の変化に重点を置き、犯罪小説としてはイマイチのものもある。短編なので…どの作品も若干物足りなさを感じてしまう。結末の先を読んでみたいなという欲求にかられることが度々。
個人的採点:65点

