林真紅郎と五つの謎 著:乾くるみ
- 林真紅郎と五つの謎
乾くるみ:著
光文社 ISBN:4-334-07532-0
2003年8月発行 定価820円(税込)
講談社の初期メフィスト賞受賞…新作がこの間の“このミス”にランクインもされていた乾くるみの短編集。雑誌掲載されたものに書下ろしを加えた5編。
妻を不慮の事故で亡くし…勤め先の大学を辞めてしまった、元法医学者・林真紅郎(シンクロウ)が遭遇する数々の不思議な事件。
「いちばん奥の個室」
トイレの個室に意識不明の女性が!?姪っ子と訪れたアイドルユニットのコンサート会場で遭遇した、女性の殴打事件。彼女はいつ、誰に殴られたのか?
人間消失ネタ?作品への導入部と考え…意外と真相にたどり着きやすいトリック。
「ひいらぎ駅の怪事件」
階段から転げ落ちた女性を介抱している間に…女性客のカメラが盗まれた!女性の転落と盗難事件に関係はあるのか?容疑者はホームにいた限られた人間だけ…。
諸悪の根源は…ダジャレ?二つの事件がどう結びつくのか…なかなか楽しめる。
「陽炎のように」
大学時代の同級生の妻が急死…他の仲間と葬儀に訪れたのだが、その同級生が巷を騒がしている連続殺人犯ではないかという疑問が浮上する…。そして、葬儀に訪れた後から、真紅郎の背後に感じる不思議な気配…まさか死んだ同級生の妻の幽霊が何かを訴えかけているのか?
果たして、どこまでが真実なのか気になってしょうがないのだが…一番、綺麗に解決するのは幽霊の正体だったりする(笑)
「過去から来た暗号」
久しぶりに会った小学校時代の同級生から…子供の頃に真紅郎自身が作った暗号文を渡され、その暗号解読に必死になるのだが…その結果、思わぬ展開が待ち受けていた。
50ページの短編で、半分くらい…暗号解読(それも作者が考え出したかなり複雑な創作文字によるもの)に費やされて、頭がこんがらがる。ただ…これだけ小難しくしておいて、肝心な物語の前フリ程度にしかなっていない(笑)これだけ書下ろしで単行本に追加されたものなのだが…個人的には、他の作品に比べてテンポも悪く、あまり好きではないかもしれない。
「雪とボウガンのパズル」
大学生たちが住む下宿先の庭で…そこに住む住人が、ボウガンの矢が刺さって死んでいた。ちょうど積もった雪のせいで…現場は密室状況を作り出していた。犯人は、住人の中にいるのか?たまたま現場に居合わせた真紅郎の推理が真実を見破る…。
雪+足跡=密室という…本格推理の王道のような展開で、推理合戦を繰り広げる。真相は意外とあっ気なかったが…答えにたどり着くまではなかなか面白かった。
全体的にオーソドックスで、読みやすいタイプ。最近はジャンルが別けづらいミステリーが多いが、王道的な推理小説として無難に薦められます。
個人的採点:65点