シェルター 著:近藤史恵 | 105円読書

シェルター 著:近藤史恵


シェルター
近藤史恵:著
祥伝社 ISBN:4-396-63236-3
2003年9月発行 定価1,470円(税込)










思わず同じタイトルの作品が続いてしまったが、まるっきり内容は違う。この作品では、もっと大雑把に、人々が救済を求める場所、逃げ道のことを指しているようで…人間は一人では生きていけない、他人に依存していかなければならないみたいなことを、タイトルで表しているようだ。

接骨院の受付嬢として働く江藤恵は…職場にも、一緒に働く妹にも“旅行へ行く”と嘘をつき家を出た。そんな彼女は…都会の片隅で、金も持たず、誰かから逃げようとしている美少女と出会い、一緒に生活するようになるのだが…。一方、恵の妹…歩は彼女の家出が心配になり雑誌編集者の恋人や雇い主である整体師の合田力に相談をもちかける…。 

巻末の解説を読むと、どうやらシリーズものらしい。近藤史恵の小説は過去にいくつか読んでいるのだが、このシリーズは初めてだ。ただ、解説にも書いてあったが…過去の作品では触れられていない主人公の姉妹の秘密に、一歩踏み込んでいるので、これから読んだほうが、他の作品が理解しやすくなって、いいよみたいなことが書かれていた。

ミステリー、推理ものと捉えるとイマイチ弱い読み物だが…相変わらず女性作家らしい視点で、女性の心情が繊細に綴られていく。逆に出てくる男たちは、ユーモアがあり、男らしさがあり、重たい作品に、どこかホっとさせる役割を担っている。

傷ついた人間を、見守り、支える、家族、仲間たちの存在…その暖かさが、読み終わった後にジワリと感じられるような…作品。






個人的採点:60点