アウトリミット 著:戸梶圭太

戸梶圭太:著
徳間書店 ISBN:4-19-861491-1
2002年3月発行 定価1,680円(税込)

けっこう好きな作家、戸梶圭太の作品。自分が読んだのは2002年に出たソフトカバー版ですが、今年2月に文庫化 されたので…きっと古本屋でも、ソフトカバー版が100円コーナーにまわされたのでしょうね(笑)
チンケな窃盗犯を同僚と共に、逮捕に向かった刑事の井川だったが…犯人の思わぬ抵抗にあい、同僚が射殺されてしまった。パニックに陥った井川は追跡中に犯人を殴り殺してしまうのだが…その男が怪しげなメモリーカードと携帯電話を所持しているのを見つけた。そのメモリーカードには3千万円の値打ちがあることを知った井川は…現金に目がくらみ謎の女と接触を試みる。タイムリミットは午後七時…それまでに現金とメモリーカードを交換しないと価値がなくなってしまうということで…井川は警察の捜査をかわしながら、取引を成功させる為に右往左往する。
相変わらず下品です。せこくて、ジコチューで、馬鹿なキャラクターばかり出てきます。でも何故か憎めないのが、戸梶作品の独特な世界観でしょうか?世間に対して、少なからず思っている不満、言いたけど言えないことを…ストレートに吐き出してくれるのが気持ちいいというか。人間誰しももっているだろう、“悪くて、弱い、醜い”部分を極端に引き出して描いている。読者や世間に対し、全然媚びてない部分が…魅力的。
けっこう戸梶作品は色々読んでいるので、もう慣れてしまったというのもあるんだけど…初めて戸梶圭太を読む人は、このブラックで、下品な文章が…どこまで付いていけるか、好みが別れるところだと思う。
犯罪に走ってしまう駄目刑事を中心に…悪事に加担する羽目になる元同僚の釣堀屋の主人とか、メモリーカードを追っているホモのチンピラ二人組とか…マヌケな警察側など複数の視点で、それぞれが微妙にリンクしていき、大団円を迎えるあたり、いつものように構成の上手さを感じる。多くは語らず…逃げること、追うことだけがメインであり、その部分のおかしさを楽しめれば、他はどうでもいいって感じなので…ノリで一気に読んじゃうのが一番だと思います。語られていないまま終ったようなことは深く追求しちゃいけない(笑)
文庫版 アウトリミット 徳間書店 2005年2月発行 定価660円(税込)
個人的採点:65点