その理由を教えて(6-1) | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「おはようございます、敦賀さん、社さん!!」

「おはよう。」

「おはよ~~、キョーコちゃん!!」

 

 穏やかな春の朝。LME事務所の扉をくぐると、そこにはどピンクつなぎを着た、愛の欠落者第一号が、せっせと事務所にモップがけをしていた。

 

「今日は掃除なんだ?」

「はい、そうなんです!!夏バテで掃除のスタッフさんが急遽お休みになられたそうで。あ、でも、今日はアルバイト扱いで給料がでるんです!!無給ではないんですよ!!

 

 「助かります!!」と瞳をキラキラさせて言う……勤労な俺のキョーコ。

 相変わらず、年齢からは考えられない、自立した女性である。

 

「そっか。でも、無理はしないでね?」

「はい!!ありがとうございます!!」

「本当に無理はしないで?もし君に何かあったらと思うと、落ち着いて仕事もできない。」

「うっ、は、はい……。ご心配をおかけしないようにします……。」

 

 俺の言葉に、全身を真っ赤にしながら、照れ臭そうに笑う彼女は、今日も可愛らしい。

 

「今日は何時に終わりそう?」

「えっと…。午後から、TBMで収録があるので…18時頃でしょうか。」

「そう。俺の方は…」

「うん。20時半頃。今日はそれで終わり、だな。」

「ということらしいので。夕飯を一緒に、どう?」

「はいっ!!では、何かお作りしますね!!」

「え?でも、たまには外食にしようよ。毎回君にお世話になるのは申し訳ないし。」

「でも…敦賀さん、外でお食事しても、なんだか目が死んでいるんですもの。」

「そうだよな~~~。他に人がいる時は多少装うけれど、俺たちの前では、常に死んだ目をしているよな~~~。そんな奴と外で食べてもおいしくないな、確かに。」

「……………。それは……その、ごめん。」

 

 『食事』というものに対する拒否反応は、もはや幼い頃からの癖に近い。気を許している相手の前だからこそ、改善できるものではなかった。

 

「ふふっ、でも、私が作ったものはおいしそうに食べてくださるので。作り甲斐があります。」

「そうだよな。キョーコちゃんの弁当だと、絶対に完食するし、その後の機嫌もいいし、大助かり。」

「……………。」

 

 しかし、その『食事』がキョーコの手作りというだけで、進んで食べたくなるのだから不思議だ。そして、それもちゃんと『美味しそう』に食べることができているらしい。実際、美味しいと思っているのだから、幸せそうに食べていてもおかしくはないだろう。

 

「それじゃあ、今回も。お世話になります。」

「うふふ、今日は敦賀さんの好きなオムライスにしますからね!!楽しみにしておいてください!!

「オムライス……。」

「はい!!」

「上に∞のマーク、つけてくれる?」

「もちろんですよ!!」

 

 「敦賀さんのお気に入りのマークですものね~~。」と、嬉しそうに笑う彼女を見て、どうしても表情を引き締めることができない。

 

「それじゃあ、楽しみにしているよ。」

「はい!!それでは、行ってらっしゃいませ。」

「うん、行ってきます。」

「じゃあね、キョーコちゃん!!」

 

 手を振る俺たちを、美しい礼で見送るキョーコ。そんな彼女が見えなくなると、社さんは「ふぅ~~~…。」と長く息を吐き出した。

 

「相変わらず甘苦しい空気を量産させる二人だな、お前たちは。」

「そうですか?」

「あぁ。ブラックコーヒーが欲しくなる。」

 

 「やれやれ。」と疲れたように言われたので、「後でおごります。」と笑いながら返した。すると、「そういう意味じゃない。」と睨まれてしまった。

 

「こんなに相思相愛のラブラブなのに…。キョーコちゃんはまだラブミー部員なんだな。」

「………えぇ。」

 

 そう。お互いの気持ちも分かり、愛し合っていると理解できたけれど…それでも。

 

「まぁ、仕方がないか。お前のこと、神聖視していたところは昔からあったし。」

「はい………。」

「その上、お前の執着の具合も分かっていないしな、まだ。」

「……はい……。」

 

 それでも、キョーコは未だにラブミー部員なのだ。

 

「俺は、俺の愛を受け止めてくれただけで十分だと思ったんですが。」

「でも、社長の考えは違うんだろう?」

「はい。」

「まぁ、俺も社長に賛同している。だって、どう考えてもキョーコちゃんの中での比重の差が現実に合致していない。」

「……そう、ですね。」

 

 俺はキョーコを愛しているし、キョーコも俺を愛してくれている。

 それをお互いがちゃんと理解しているし、疑う気持ちは一切ない。

 

 けれど。

 

「ちゃんとキョーコちゃんが現実を見られるようにならなければ、確かにお前たちはすぐに破局することになるよ。」

「…………破局なんて、させません。」

 

 社さんの口からこぼれ出た言葉に対し、どす黒い感情が生まれてくる。

 離れようとするならば、縛り付ける。

 一度は手に入れたものだ。逃すことなど、できるわけがないだろう。

 

 知らなければ我慢できたものも、一度知ってしまえば、もはや失うことなど不可能。

 ゆえに、『破局』なんてありえない。

 
 
 
 

 

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