初めましての方も、そうでない方もこんばんは。

ドラゴン★ラビットの兎担当(!?)蓮と言います。


リライトへようこそいらっしゃいました。

当ブログでは、現在長編ファンタジー小説『クロニクル』を連載中で

今のところ、第2第4日曜日が更新日となっております。

(たまに、第1第3に更新している時もあり)


更新頻度が低い上に、不定期で申し訳ございません。

そこで、今日は例によって更新日でございます!!


最新のエピソード44話は、現在わたくし蓮が執筆中なのですが・・・少々煮詰まっておりまして

また、私事情の諸事情(駄洒落ではありません)により・・・


えーと、つまり簡潔に言いますと。「本日はクロニクルUPできません!」

ご迷惑をお掛けいたします。更新を楽しみにして下さっている方(がいらっしゃいましたら;)には

本当に申し訳なく思っております。

44話につきましては、原稿が出来次第UPしようと思っております。


また、今後更新日を少々変更する可能性がございます。

その際には、またこうしてフリートークでご連絡致しますので

たま~にチェックして頂ければ幸いでございます。


それでは、今後もドラ★ラビをよろしくお願い致します(ぺこり)

――ガチャン。


クラウドを残した部屋から少し歩いた向かえ部屋のドアを閉めると、

トキはつかんでいたキラを前後に揺さぶった。


「なんてこと、言うんだよ」

「やーめーてー!頭クラクラする~」


あ、ごめん。と力を緩めたトキの手に掴まりながらキラは口調を落ち着けた。


「だって、本当のことでしょう」

トキはまだ赤みを残した顔を隠すように下を向く。

「他人と接するのが苦手なのはいいわ。でも、いつか あなたが・・・」


艶やかな毛並みの白兎は、少年の髪と同じ金がかった琥珀色の揺らぐ瞳を見つめる。


「トキが、誰かを信じてあげなくちゃ・・・トキを信じてくれる人もいなくなるわ」

「そんなの・・・」

「不安は分かる。トキの心がそんなの望んでないことも分かってる。それでも・・・」


   ”人を信じる想いは 時に強い力になるの――”



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   「ぼくはみんながだいすき」

                 「おかあさんがだいすき」


      「おにいちゃんがだいすき!!」



   それなのに・・・どうして?


視界は暗い。深い深い 闇の中のよう


   信じてる。 信じてた。  大切に想っていた  だから・・・



            ”もう、何も信じられない”




――朝の陽射しで目を覚ましたトキは、泣いていた訳でもないのに

濡れた瞳をしばらく開けたままぼうっとしていて、

ベッドから起き上がる気力が湧かずに天井を見つめていた。

なんとなく、今日は体を動かしたくなかった。


ふと目をやると、キラが窓から外を眺めていて

そういえば、と部屋が8階だった事を思い出す。

あそこからなら町の景色を広く見下ろすことが出来るのだろう。


特に声をかけることもせずに、トキは寝返りを打った。


それから、程なくしてドアの向こうからノックオンが聞こえた。

「トキ。もう、起きてるか」


クラウドだ。

昨日の別れ方の気まずさも相俟って、トキは毛布を口元まで引き上げた。

「・・・なんですか」

「いや、その。なんだ。 今日は天気もいいし、

 特にこの国でやることがないなら一緒に観光でもどうかなーと思ってさ」


普通に振舞うクラウドの様子に、少し安心はしたもののやはり部屋から出る気は起きなかった。

変な夢でも見たのだろうか。頭が痛み、体が重い。

「トキ。大丈夫?」

いつのまにか、キラがベッド脇に駆け寄っていて心配そうにトキの顔を覗き込んだ。

「少し休めば・・・」

頷きながらそう言うと、キラは尻尾をフワフワと振った。


「昨日は色々ごめんなさい。 私、でしゃばった事言っちゃった」

そんなことはないよ、とトキは少し表情を緩めた。

「私はトキを信じてる。トキも、私の事を信頼してくれてるって、思ってるわ」

キラはピョンと床に跳び降りた。

「心から信じられる。そんな頼れる人が、もっと増えたらいいよね」

そう言って哀愁を帯びた微笑を向けると、そのままドアへと駆け出した。


「今日は、ゆっくり休んでなさいよ。 クラウドの相手は私が引き受けるわ」

お姉さん口調でそういうと、キラは入り口に置かれていた小棚に跳び乗り、器用にドアノブを回した。

「お待たせ~♪生憎、トキは今日調子が悪いの。

 それで・・・しょーがないから、このキラ様が特別に一日デートしてあげるわ!」

明るい口調で廊下のクラウドに声をかけると、トキを気遣う様に静かにドアを閉めて行った。



                                    by 蓮

トキたちが通された部屋は、予想より狭く少し質素な感じだった。

同じホテル街とはいえ、やはり建物内の造りや装飾には差が付けられているようだ。


「まぁ、なんせタダだしな~」

「タダにしては、すっごく良い方よね~♪」


クラウドとキラは相変わらずで、それぞれに部屋の感想を述べる。

先程横切った一際豪華なホテルより劣っているとはいえ、旅人には贅沢すぎる程の施設である。


「2人とも、タダタダって・・・」


トキはため息をついた。

確かに無償でここまでの部屋に宿泊できることはありがたいが、

2人にはもう少し礼儀をわきまえて欲しいものだ。


「見て見てー トキ!! ベッドがフカフカよ」

キラは疲れを忘れてはしゃいでいる。

「しっかし、豪華だな。こんなじゃ儲けがないだろうに」

クラウドが窓辺に設置された小テーブルの装飾を突付きながら言った。


「よっぽど人を集めたいんだろうな」



町の通りは、住人の他に観光客や旅の通行人で賑わっておりその分流通が盛んになる。

小さな市場でさえも、十分にその恩恵を受けているようだった。

国を挙げての町の改革は大成功を治めているといえよう。



「ところで」


しばらく、部屋を見て回ったあとトキが口を開いた。

「あなたはいつまでここでくつろいでいるつもりですか」

トキの視線が流れる。

視線の先の相手は言うまでもない。


「・・・え、俺?」

「他に誰が」


備え付けの椅子で優雅に座っていたクラウドは、しばらくシクシクと泣き真似をした。

ひどいよ~トキぃ

俺たち仲間じゃん~

などという呟きなど無視したトキは、即座に退室を促す。

「一人ずつ部屋を与えられたんですから、自分の部屋へ行ってください」

トキのペットとして登録したキラは人数には入っておらず、

そのキラがすでに一つしかないベッドの真ん中を陣取っているのだから

出て行くのは必然的にクラウドということになる。


「えー、別にいいじゃねぇか。二部屋借りたって同じとこで寝ても」

「何の為に」

「つれないな~ 俺たち友達だろ?」

「それは初耳ですけど」

「俺、夜は一人じゃ眠れないんだよな」

「知りません」


いつまでも小さな子供のように駄々をこねるクラウドにトキはそろそろ嫌気が指してきていた。


「俺、この部屋がいいんだよっ」


「・・・わかりました」


え!?という驚きと期待の入り混じった声を上げたクラウドを横目にトキは入ってきたドアに手を掛けた。

「ぉ、おい!どこいくんだよ」

「あなたがそんなにこの部屋がいいなら、僕がもう一つの部屋へ行きます」

「なんでそうなるんだよ~! トキは俺が嫌いなのか」


トキの肩がピクッと反応する。

クラウドには背を向けたまま、トキは少し俯いた。

「嫌いっていうわけじゃ・・・ありません」


「えっ」

急に素直な態度を取られて、調子を崩されたのはクラウドだ。

「リザさんの所では、本当にお世話を掛けました」

「や、何言ってんだよ! あの時はお前、体の調子が悪かったんだし。全然構わないって言っただろ」

「・・・・・・」


「クラウドったら、意外とまだお子ちゃまなのね」

妙な雰囲気に包まれた2人の空気を打ち破るようにキラが口を挟んだ。

「トキは旅をしてきて、誰か人に頼ったことがないの。 自分の弱みも見せたことが無いわ。

 それなのに、クラウドなんてよく分かんない男とあんなに長く関わりあったんだもの。

 戸惑っているのよ」


「っキラ!!」

トキは顔を赤らめながらキラのおしゃべりを抑制した。

「余計なことは言わなくていい。ほら、行くよ」

ドアを開けるトキにやや強めに捕まれたキラはクスッと笑いながら去り際に言った。

「恥ずかしいのよ。・・・あんたとどう接すればいいのか、わからないのね」

トキは耳まで紅に染めていて、キラの最後の言葉までは聞こえなかったようだ。


「あんたが、本当にトキの仲間になるって言うなら 最後まで傍で。 ・・・守ってあげて」


目を見開いてボーとしていたクラウドが「ちょっと待って」と言う前にドアは静かに閉められた。

部屋に取り残されたクラウドは、惨めさと恥ずかしさと戸惑いを隠しきれないと言った様子でベッドに飛び乗った。

「クラウドなんてよく分からない男、ってなんだよ。 ”なんて”は余計なんだよ・・・」

クラウドの蒼い瞳は先までのトキの様子を写しだし、キラの言葉に揺らめいでいた。




                        by 蓮

「そういえば、トキはこんな都会に来るのは初めてじゃない?」

キラがクラウドの肩の上で跳ね上がる。


「うん・・・それに、とてもいい国みたい」

民の表情からも、努力の末に手に入れた暮らしの良さや充実感が伝わってきた。

「へぇ、トキは田舎育ちなのか?世界にはここよりまだまだでっかくて進んだ国があるんだぜ」

クラウドは調子を取り戻しつつ、歩みを再開した。

「んじゃ、カストロ帝国の城下町なんかに行ったらトキはびっくりするんだろうな」

「カストロ帝国なら、僕も少しは知ってますよ」

トキは、からかうクラウドにムスっとした表情を返した。

「それより、この国に来てからずっと考え込んでるみたいですけど。何か気になることでもあるんですか」

「んー?」


メインゲートから4つ目の角を曲がりながら、クラウドは返事を返した。

「この国は、なんつーか。急成長しすぎなんだよなぁ」

「え?」

「別に、俺たちが気にする程のことじゃないさ。 おっ、この辺りじゃないか?」

トキは、クラウドが何に取っ掛かりを感じているのかを理解出来ぬまま、早足になった彼の後を追いかけた。

向かう先は第2ホテル・セクターという、大規模なホテル街。

入国審査官から手渡された、トリップチケットを見せれば旅人や観光者は3日間無償で宿泊ができるというのだ。

「素性の知れない旅人なんかでも、お金を取らずに泊めてくれるなんて太っ腹よね!」


ホテル街は、日暮れまでまだ時間があるというのに既に電灯が灯され煌びやかな雰囲気を醸し出していた。

豪勢な装飾の白い柱が黄金色に浮かび上がっている。

ホテルの入り口付近には様々な肌の色・異国の服を纏った人々の姿が見える。

装いからして、金持ちの訪問者が多いようだった。

所々に粗末なマントに身を包んだ人の姿も見受けられた。

彼らも、恐らくトキたちのような渡り者なのだろう。

「ちょっと、僕たちには場違いな感じですね」

一応身なりはそこそこに整えているとはいえ、華やかなホテル街には簡易で粗末な衣服が悪目立ちしていた。


一際大きいホテルのフロント前には観光客が溢れ、黒服たちが慌しげに歩き回っている。

社交場感覚で、貴族夫人たちが立ち話に花を咲かせている為、各部屋への案内がスムーズにいかないのだ。

「お金持ちからは、しっかりお金を頂いてるみたいだな」

その様子を横目に見ながら、クラウドが呟く。

「見て!あそこだわ!!さっきのトコにも負けず劣らず素敵なホテルじゃない」

キラは、早くフカフカベッドに飛び込みたくて仕方がないと言った様子で声を弾ませた。

「そんじゃ、早速チェックインと行きますか」




                                              by 蓮



まだ、日が明け切らない薄暗い街角


「はっ、ハッハッ・・・くっ」


息を切らしながら細い路地を走る者が、また一人。


「はっはっ  ・・・ハッ く、来るな」


彼の背後から迫り来る無数の人影。


「俺はお前等のいいなりにはならない!離せっ、・・・何なんだこの国は!!」

「アナタも、ダグマル様の為に働き、新たな力となるのです」

「意味がわからない! 俺はここに留まる気などない!」

「アナタにそれを決める権利はありません。

 この”ザンフト”に足を踏み入れた時から既に、その運命はこの国と共にあるのです」

頭から布を纏った傭兵たちが取り出したのは剣ではなく小さな鏡片が輝くペンダント状の首紐だった。

徐に取り出したそれを、追い詰めた男の目に近づける。

鏡は小さい表面に月も写さず、黒き闇を渦巻かせて鈍く光った。


「やめろっ や、うゎあぁぁぁーーー」




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「ようこそ。S.H.C.~新生特区へ お荷物をこちらへ」

「旅人様ですね、国を挙げて歓迎致します。 どうぞ奥へお入り下さい」

ろくに身体検査もされぬまま、早急に通された砂漠を越えた先の

発展途上国S.H.C.での余りの優遇ぶりにトキたちは戸惑っていた。


砂漠の果てに、広大な土地を据えたこの国は近年

政権交代による近代化への経済革新を進め、急速な発展を遂げたという。

粗末な作りながらも、中規模な鉄鋼建造物が立ち並び大通りを行き交う人々は活気に満ちている。


「すごいわねぇ。人がいっぱい!!」

「・・・まだ日も落ちてないからね」

トキ達は辺りを見回しながら大通りを歩いていた。

「見て見て!トキ!! あっちが噂のホテル街ね。大きい!」

「うん」

「ホテルよ! 小さい民宿じゃなくてっ! 久しぶりにベッドの上で羽を伸ばせるのね~」

キラはトキの肩の上で白銀の両耳をぴくぴくと小さく羽ばたかせた。


そんな2人のやり取りなど、耳に入らないという様に、

旅の同行人・クラウドは顎に手を当てて何やら考え込んでいた。

「う゛ーん、・・・っかしいなぁ」

そのクラウドの様子を見かねたキラは、ぴょんとトキより高くて頑丈な肩に跳び移った。

「さっきから、なーに唸ってんのよ?クラウド」

「んー?いや、別に」

「どこか具合でも悪いんですか」

トキも歩みを止めてクラウドを振り返る。

「あ~いやいや!マジ、なんでもねぇよ。ちょっと予想外だったっつーか・・・」

クラウドは都市の中心部に聳え立つ巨大な塔を仰ぐと、両手を頭の後ろで組んだ。

「スゲー、変わったなぁってな」

「確かに、道中で貴方から聞いていた国とはイメージが違いますね」

苦笑気味のクラウドの後ろに広がる近代的な景色を眺めながら、トキは言った。


                                              by 蓮