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事例で学ぶ民法演習(324+目次5頁、本文321頁、ソフトカバー)は、北大の先生方による演習書です。
執筆者がはしがきで述べるように「本書の作成にあたっては、まず、条文から出発し、条文の文理から直ちに結論を導くことができない問題は、規範をどのように導くか、その道筋、すなわち、規範の拡張、縮小、類推、規定欠缺部分の規範発見、利益衡量が読者によくわかるように書くことを意図」して書かれているといえる本です。つまり、事例に対してどの問題点が、条文に照らすとなぜ生じるのか、条文趣旨からするとどう解決されるべきか、この結論が条文のどこの規定によって生じているのかを条文を指摘しつつ説明しています。解説だけ読んでいると条文との関係が希薄になりがちなので好印象を持ちました。
また、「具体的事例への法の適用を通して学ぶことが不可欠」ともはしがきで述べるように、法理論を示すだけでなく異なる理論がある場合事例に適用するとどのようになるかまで示しているところは、学者が書いた民法の演習書として珍しく解答付きと評される演習書となっています。
個人的な意見ですが、法律に限らず(中学校高校での数学の勉強などでも感じていたことです)、演習書として売るものには解答をつけることが必須であるべきと考えています。演習書の目的は、問題の検討を通じて学習した知識の使い方を体得することがあるはずであり、使い方が正しいのか解説・解答で確認する方法がなければ演習書の目的は達成できないと考えるからです。
この本は、理論だけでなく事例の解決も意識した解説となっているため、演習書としての要件を満たしっかりした良書との印象を受けます。
全体の構成を見ると、総則10問、物権7問、担保物権6問、債権総論8問、債権各論11問、となっており家族法はありません。また、債権各論のうち7問は不当利得・不法行為なので契約各論が薄く思えます(ただし、総則や物権の問題でもちょくちょく出ているので一応カバーされているとは思われます。)。問題の長さは平成以後の旧司法試験並から予備試験より短い長さと言った印象です。
全体の感想として、総則の問題や一つの判例のみで結論出ると思える問題は、比較的簡単という印象を受けますが、物権や債権は考えさせられるものもあります。旧司のように場合分けした問題も出てきます。全体を通して、解説がくどくならない程度で短くまとまっているので、基礎事項の確認から始まり新たな発見も見つけられるものという印象です。
共有と組合の違いや解除の考え方などは理論面でなるほどと思えるものもありました。
ページ数の関係から下手に基本書を使うより、繰り返し見直ししやすく知識の定着用として有用だと思います。
一方、誤字が所々ある(設問を設間となっているなど)のでここは、修正を期待したいところです。