真央選手、ロシア杯の優勝、そして3季ぶりのファイナル進出おめでとうございます。
演技自体は満足のいくものではなかったと思いますが、
結果的にはベストな展開だったと私は考えています。
ジャンプは残念でしたが演技内容はとても意味あるものでした。
まず、SPで(信夫コーチから)課題に挙げられたスピンでは全てにおいて最高レベルをとることができました。
翌日すぐに、そしてきっちりと修正してきたというところに価値があります。
次に、NHK杯で残した課題についてもひとつひとつクリアできたという部分。
FSで回転不足をとられた後半の3連続ジャンプは意識してしっかりと回りきっているのが
テレビを見ていても感じられました。
やや微妙だったループも今回は素晴らしい出来でした。
見直しを図ったといっていたステップではSP・FSともにレベル4を獲得。
これはお見事というしかありません、素晴らしいですね。
ジャンプでいくつかの失敗はあったものの、実はとても大きな収穫がありました。
成功したジャンプは全て質が高いもので、前回に比べて加点の幅が大きく伸びました。
以前は成功したジャンプでも、1点以上の加点をもらうことがなかなかできませんでしたが、
今回、2つの単発ジャンプとコンビネーションジャンプでそれが見事達成されています。
試合を重ねるごとに、浅田選手の評価がうなぎ登りに上昇していることが窺えました。
2試合を通して、昨シーズンに佐藤コーチと積み上げてきたさまざまな取り組みが花開き始めました。
その成果は誰の目から見ても明らかなほど大きなものです。
ジャンプに固執することなく、全てのエレメンツに均等に力を入れるように意識を変えてきたおかげで
今回のように少し崩れ気味になっても、しっかりと別の部分で点数を稼ぐ事が出来るようになりました。
これは、本当に大きな強みになります。
佐藤コーチもきっと心の中で 『よしっ』 とガッツポーズをしていることでしょう。
さて、ここまでは演技内容について述べてまいりましたが、
次に精神的な部分について少し触れたいと思います。
そもそも今回真央選手がジャンプにミスがあったのは、
彼女の心の中に 『勝負』 を意識する気持ちが強く芽生えたことが原因だと思います。
先シーズンは自分の技量に自信が持てないことから崩れてしまうということが続いていましたが
このロシア大会では全く違った理由ですね。
もともと彼女は 『勝負』 に重きを置いている選手です。
そうでなければ “試合が好き” と口にするはずがありません。
スランプに陥ったり、基礎の見直しのため本来の力が発揮できないシーズンでさえ
試合が好きな気持ちは消え去ることがないのですから、 『勝ちたい』 という気持ちはとても強いと思います。
“自分の演技が出来ればそれでいい”
“勝ちには全く拘らない”
もし、常日頃からそういった気持ちしかないのであれば、現役でい続ける必要はありません。
一度でも頂点を極めたら、競技から離れて大好きなアイスショーに力を注げばいい話です。
荒川静香さんはまさにそちら側のタイプです。
『ショーに出るために試合で結果を残し、即引退』
『有言実行でアイスショーに力を入れ、自分の技術も保持し続ける』
荒川さんの徹底した生き方は見事なまでに素晴らしく、全くぶれがありません。
彼女についてはまた時間があるときに記事にしたいと思っていますが、
真央選手とは正反対の意味で、非常に尊く素晴らしい人物だと私は思っています。
フィギュアスケートは“魅せる”ものではありますが、
競技となるとそれだけでは意味がありません。
勝ちに拘りすぎるのもどうかと思いますが、やはりトップに立ち続ける選手というのは
『最高の演技を魅せる』 ことと同時に 『勝ちたい』 という気持ちも必要だと思います。
ですので、真央選手の 『試合好き』 というのは大事なことだな、と思うわけです。
少し話が逸れました。
(いつものことですが。。。)
けれども、その気持ちが強すぎると試合に悪影響を及ぼしかねます。
真央選手はわりと、その傾向が強い選手だと思います。
過去何度か、自分の演技に期待したり、点数を意識することによりミスをしてしまったことがありました。
バンクーバー五輪のフリーの演技がいい例ですね。
今回も 『ファイナルに進みたい』 という気持ちから少し硬くなってしまい、
練習では出来ていたことが本番でミスをしてしまうという結果を生みました。
本人はとても悔しそうな表情を浮かばせていましたし、
心の中では表面以上にそう思っている事でしょう。
けれども私は、今回彼女が失敗をしてしまったことは、
結果的にはとてもよかったのではないかと思っています。
なぜなら、ここまで非常に順調に進んできて、久々のファイナルを迎えたとき
彼女はやはり、『ここまできたら優勝したい』 と意識してしまうはずです。
自分に期待を大きくかけるはずです。
ここしばらく調子を落としていただけに、その気持ちはより強いものになるでしょう。
今の状態は精神的にとても落ち着いていますし、大崩れはしないでしょうが、
ロシア杯でのこういった形の失敗がもしなかったらば、ファイナルの試合でかなり高い確率で
今回のような試合運びになってしまうだろうと予測されます。
ですので、今の内にその失敗を身をもって体験し、
ファイナルではこうならぬようにと戒めることが出来たという点では
この失敗がよい練習になったのではないかと思うのです。
さて、とうとうここまでやってきました、真央選手。
昨シーズン進んできた真っ直ぐな道には、一本道に見えながらも
彼女に必要とされる様々な横道が施されていました。
そして、そのどれもが“新しい”もの。
・新しいトレーニングスタイル
・新しい世界
・新しい視点
(この 『横道』 については別記事にて詳細を述べる予定です)
そのひとつひとつに寄り道をすることで、ゴールに辿り着くまでには時間を要しましたが
今、ようやくその過程を終え、いよいよ第一段階の完成型に迫っています。
それを私たちが見ることが出来るのは、グランプリファイナルの場なのか、
全日本選手権なのか、それとも世界選手権までのお楽しみなのか。
応援している私たちこそ焦らず、温かい目で彼女を応援し続けていきたいものです。
それではこれからBS放送でゆっくりと男子の演技を楽しもうと思います。
結果もすでにわかっているので、力むこともありませんしね。