北山猛邦さんの『千年図書館』を読みました。

 

以下、次のような順序でお伝えしてまいります。

 

あらすじ

こんな人にオススメ

この作品のここがスキ!ポイント

一話ずつ振り返りながらのネタバレ感想

『千年図書館』が気に入った方向けのオススメ作品5選

 

 

よろしくお願いします!

 

 

*ネタバレが気になるお話ツートップ、「千年図書館」と「さかさま少女のためのピアノソナタ」に関しましては、ネタバレ感想の欄で可能な限り詳しめにお話しております。

物足りなかったらスミマセン!

 

 

*「さかさま少女のためのピアノソナタ」

ドラマ化決定おめでとうございます!

たっのしみー!!!

 

 

 

 

 

vedat99によるPixabayからの画像 エフェソスの図書館遺跡

 

 

 

北山さんはミステリ界では「物理の北山」と呼ばれています。

 

物理トリックが得意なミステリ作家さん。

 

二つ名があるなんて、なんとカッコいい……!

 

 

 

『千年図書館』もタイトルからして、

 

「千年?! 図書館?! これは大掛かりなトリックがありそうだ!」

 

と推測し、読む前からわくわくしていました。

 

 

『千年図書館』あらすじ

『千年図書館』がどんな短編集か、は、裏表紙に書いてある2文に全て集約されている気がします。

 

「全てはラストで覆る!」

「強烈な余韻があなたを襲う5つの物語」

 

……ぶっちゃけ、「あらすじは以上です」と書いてしまいたいくらいの気持ちです。

それはなぜか。

 

この裏表紙の2文が言い当てすぎているというのもあります。

講談社さんの編集さん、凄腕。

 

 

あらすじを書こうとすると不安と心配に駆られます。

 

なぜなら、『千年図書館』に収録されている作品は、繊細な物語ばかりだからです。

ちょっとした言葉がネタバレにつながりそうな気すらします。

 

「大胆かつ緻密な、青春風味もある短編ミステリ」とだけ、申し上げておきましょう。

 

 

ちなみに、『千年図書館』は、短編集『私たちが星座を盗んだ理由』の第2弾といった位置づけの短編集です。

 

 

 

『千年図書館』はこんな人にオススメです

  • 短編ミステリが好きな人
  • ファンタジー風味のミステリが好きな人
  • 青春ミステリが好きな人
  • 大掛かりなトリックが好きな人
  • 主人公無双系ではない正統派なライトノベルが好きな人
  • 初期の島田荘司さんの作品が好きな人
  • SFが好きで、特に星新一さんの作品や新井素子さんの作品が好きな人

 

以上、ひとつでも当てはまる人には『千年図書館』超オススメです。

 

 

他にも、オススメに関してかなり個人的な印象で恐縮ですが……

 

  • 貴志祐介さんの『新世界より』が好き
  • 『三分間ミステリー』や『五分間ミステリー』が好き
  • 蘇部健一さんの作品の中でもおふざけ少なめなものが好き

 

……といった人には、『千年図書館』、気に入ってもらえそうな予感がいたします。

 


北山猛邦『千年図書館』

 

 

 

『千年図書館』レビュー(ネタバレなし)

『千年図書館』のレビューをさせていただきます。 そして「好きポイント」を語らせていただきます!

ネタバレはしません!

 

裏表紙のキャッチフレーズが◎!

裏表紙の煽り文句(講談社さんスミマセン)が秀逸です。

 

「全てはラストで覆る!」

「強烈な余韻があなたを襲う」

 

この文言は決して読者を裏切りません。

 

すべてがひっくり返されて、ゾクッときます。

 

 

ラストと余韻がそこまでではなかったのも……でも調べて納得して◎!

……正直に言うと、そこまで「ラストで覆った!」「余韻がパネェ!」とまではならなかった話もありました。

 

それは、最終話の「さかさま少女のためのピアノソナタ」。

 

覆すのに自力が必要でした。

 

ネットで調べちゃったし。

 

それはそれで良かったと思います。

知識が増えました。

 

 

でもやっぱ読んでる最中に覆らないと、読書的、ミステリ的な「スッキリ」はしませんね。

 

最終話だけ、音楽的な知識、音楽のトリビアが必要だったように感じました。

 

 

 

多彩なファンタジー要素!珠玉作品が詰め込まれてる感が◎!

『千年図書館』は、どの作品もファンタジックです。

 

完全にSF風味の作品もありますし、ホラー的なものもあります。

 

詳細にジャンル分けするつもりはありませんが、こんなにも多様な作品が1冊の中に詰め込まれてるのってめっちゃお得だと思います。

 

「一粒で二度美味しい」じゃないですけれども、1冊で5回美味しい。

 

とてもセンスのいい珠玉の作品集だと思います。

 

 

 

素敵な装画が◎!

表紙ももちろんのこと、『千年図書館』は挿絵も超素敵ですよね。

 

 

ふわっとしているかと思えば、どこかミステリアスで……想像力がふくらみます。

 

片山若子さんのイラストとのこと。

 

 

片山若子画集 渋皮栗@Amazon

 

 

片山さんのファンにもなっちゃいました。

 

 

 

だがしかし。ワタクシ、やらかしました。

 

読書中にいきなり大失敗しちゃったのでまずは聞いてください(´;Д;`)

 

 

未読の方はパラ見しないでね!

 

未読の皆さん。どうかお気をつけを!

 

 

『千年図書館』は、

 

絶対パラ見しちゃダメです。

 

 

 

挿絵が素敵だからって、先に挿絵だけ見ようとしちゃダメです。

 

 

挿絵のあるページは全面グレーなので小口でわかるようになってますけど、絶対先にパラ見しちゃダメです。

 

 

読了された方は「ああ……アレを見てしまったのか……」と生暖かい憐憫をおかけくださることでしょう。

 

ありがたいです……しかし時は戻せない……(´;Д;`)

 

未読の皆さんは私と同じ轍を踏まぬように……(´;Д;`)

 

 

 

『千年図書館』を一話ずつ振り返ります【ネタバレあり!】

収録されている5作品、いずれも非常に深く強く印象に残ります。

『千年図書館』の5つの短編、ひとつずつ振り返っていきたいと思います。

 

 

*ここからネタバレで書かせていただきます。

未読の方はご注意ください。

 

 

 

1「見返り谷から呼ぶ声」

この作品、一番好きかもです。

 

ぶっちゃけ騙されました。

 

最後の一文で「ぬぁぁぁ~!」ってなりました。

 

不思議感はありましたけれども、作品全体を取り巻く田舎の雰囲気、なんともいえない懐かしい雰囲気に浸っていたらおいおいおいおい!みたいな。

 

こういうミステリ、好きですね……!

 

 

この3人の連作ミステリを作ってくれたらいいのに~、と途中で思っていました。

 

でもまさかの……!

もう彼は……!

 

いやー、好きですね。こういう作品。

 

 

 

2「千年図書館」

これね。ほんと、先ほど書かせていただいたように、この作品の最後のページを先に見てしまうという大チョンボをやらかさなければさらに何倍も楽しめたのにと思うと泣けてきます。

 

が。

 

オチがわかっていても面白かった。

 

不思議な村、

不思議な図書館、

緊迫感、

どれも、極上のワクワク感をもたらしてくれました。

 

途中、「本」が「本じゃないモノ」でありそうな感じはうすうすしましたけれども。

ワゴンで運ぶなど、すごく重そうなモノとして描写されているところがあったので。

 

なぜ、これを「本」と呼ぶのか……というところまで突っ込んであったらさらにすごかったと思います。

 

 

あ、最後のページのマークがイマイチぴんとこなかったという方は、

↓をご覧ください。

 

ハザードシンボル(Wikipedia)

 

 

 

3「今夜の月はしましま模様?」

この作品、まさかラストの一行でアレを狙っていたとは……

しばらくの間、頭を離れませんでした。

このまま頭を離れなかったらどうしようと思いました。

北山さん……おうらみもうします……

 

今もたまに思い出します(^^;

 

 

「物理の北山」と呼ばれる作家さんなので、大変失礼ながら、「こういう作品も書けるんだ」というのが最初の印象でした。

 

日常のあるあるネタに、科学とホラーの要素を見事に融合させています。

 

北山さん、SFジャンルでも絶対成功する作家さんだと思います。

 

 

 

4「終末硝子」

ミステリとして一番好きなのがこの4作目、「終末硝子」です。

 

「出た!物理!」という感じです。

 

久しぶりに戻った故郷。

なぜか林立している塔。

その塔は墓だという。

 

こんなステキな設定を、どう料理してくるんだろう、ともうワクワクが止まりませんでした。

 

ラストも申し分ない終わり方でしたけれども、ひとつだけ。

 

このタイトルはどうかな……と思いました。

 

完全に、塔のほうが印象を食ってた感じがしたので。個人的にはですが。

 

 

あー、でもちょっと待ってください、今、このお話のことを思い返していたら……

 

この作品集の中のいち作品、としてならば、タイトルは「塔のナントカ」とか「ナントカの塔」などとするよりも「終末硝子」のほうがフィットする感じもしますね。

「終末硝子」のほうがずっとファンタジック感が増します。

 

単発のミステリ作品としてなら、タイトルに「塔」の文字が入っていたらよりワクワク感が増したような気もします。

 

 

それにしても!

久々の大型物理トリック、堪能させていただきました!

 

物理トリックだけでなく、心情描写がとにかく良かった。

この作品集は、すごく心情描写に重きを置いているなぁと思います。

 

そういう意味でも、タイトルを「終末硝子」にした意味が再度腑に落ちた気がします。

この作品集にフィットしているなぁと重ねて感じます。

 

 

5「さかさま少女のためのピアノソナタ」

さかさま少女ってどういうこと?

と思いながら読んでいったら。

 

うわー、これはなかなか意表をついた展開……!

 

ほんと、北山さんてSFでこんなうまい作品書ける方だったんだなぁとしみじみしました。

 

 

上述もしたとおり、トリックというかラストに関しては、読み終えたときは「こういうことかな?」と想像で補い、一応ネットで調べて「ああやっぱりそういうことなのか」と確認しました。

 

 

確実にこれが正解、とは言い切れませんけれども、楽譜を逆さまに置いて(その音符の通りに)演奏したから、時間を逆行させられた……ということだと思います。

 

 

楽譜を逆さに置いて演奏するエピソードは、ピアノ教室 ブリランテ様のブログや「モーツアルトの回文的逆行可能なカノン」(音楽&数学らんど様)で知りました。

 

 

モーツァルト(現在ではモーツァルト作ではないというのが定説らしいですが)の「カノン」は逆さに置いても演奏することが可能とのこと。

楽譜を見てみると逆さ向きのト音記号がついていたりして面白いです!逆さ引きさせる気満々。

 

 

それから、ベートーベンの逸話。てか武勇伝。

ある日、ベートーベンとライバルのシュタイベルトが対決演奏会のようなことをしたらしい(料理の鉄人ならぬ音楽の鉄人的な?)。

そもそもこの対決はシュタイベルトのほうから仕掛けてきたようなのですが、さらに彼は、ベートーベンの作品をアレンジした曲を演奏したらしいのです。

今なら炎上必至の煽りですね。

 

当然、ベートーベンもバカにすんじゃねーとご立腹(と思ったかどうかはわかりませんがなんか肖像画とか見てると沸点低そう)

ベートーベンは、シュタイベルトの楽譜を譜面台に逆さに置いてそこからテーマを取り出し即興ですばらしい演奏をしたという、ベートーベン△なエピソード。

 

 

 

千年図書館の感想に戻りますと……

 

さかさま少女のピアノソナタ、「ソナタ」というタイトルからイメージするのはベートーベンのほうかなあ……主観ですが……。

あと、モーツァルト(じゃないかもしれない回文楽譜)のほうはバイオリンのための曲らしいですし。ピアノで弾けないことはなさそうだけど。

 

そう考えると、「さかさま少女のためのピアノソナタ」でピアノを弾く主人公の苦悩と、ベートーベンの生涯を通じての苦悩を掛け合わせているとも考えられます(推測というより邪推ですあしからず)。

 

 

 

そんなわけで、ラストに関しては、驚きは軽めでしたけれども……

 

作品全体の雰囲気はすごくいい!

青春風味とSF風味がちょうどよく効いてる!

 

ぜひ、ガチで青春&SF小説、書いてほしいです、北山さん。

 

 

 

『千年図書館』、まとめとして。

 

もう一度、わたし的大事件から書かせていただきます。

 

 

『千年図書館』は

パラ見しちゃダメ!絶対!

 

 

挿絵が綺麗だからつい……

 

 

他の短編の挿絵も見たくなって……

 

パラパラッ

 

あ。

 

見 ち ゃ っ た

 

 

そうです、表題作の、あのマークを。

 

黒一色ベタ塗りだからめっちゃ目につくし……(´;Д;`)

 

 

やっちまったなーと落胆しましたね。

 

何やってんだと。

 

新本格、新新本格ならありうるだろと。

 

パラ見の危険性、熟知してたんじゃないのかオマエはと。

 

しかも作者はメフィスト賞作家さんじゃねーかと。

ヤツらは何仕掛けて来るかわかりゃしないんだから常に気を張ってなきゃアカンだろと。

(失礼極まりない!すみません。愛ゆえにですあしからず!!!)

 

 

自己ツッコミ、しまくりました。

 

 

 

『千年図書館』の私的キャッチコピー

オーラスに、『千年図書館』の私的キャッチコピー、特に表題作を読んで思い浮かばざるを得なかったキャッチコピーを3つほど、書かせていただきます。

 

  • 綺麗な蘇部健一
  • 品の良い『六とん2』
  • ファンタジックな『動かぬ証拠』

 

 

……北山さん、蘇部さん、すみません。どうかあしからず。

 

 

でもすごいいい意味で、ですよ!

優しくってあたたかい。そしてちょっぴりダークでたまにギャグテイストもあったりする。北山さんの『千年図書館』も蘇部さんの『六とん』も、新しいミステリのひとつの形だと思います。斬新だけれど、どこか懐かしいミステリです。

 

 

 

 

 


北山猛邦『千年図書館』

 

 

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『千年図書館』を気に入った人へ!おすすめのミステリ7選

 

北山さんの『千年図書館』を気に入った方へ

↓オススメ作品!↓

 

 

『千年図書館』の前作的な立ち位置の作品集。

北山さんにハマった人にはぜひご一読いただきたいです!


北山猛邦『私たちが星座を盗んだ理由』

 

 

 

『千年図書館』著者・北山猛邦さんの記念すべきデビュー作。

トリックを堪能したい方におすすめです。

第24回メフィスト賞受賞作。


北山猛邦『クロック城殺人事件』

 

 

 

物理の北山×ダンガンロンパ!!!

大人気・推理ゲームの「霧切響子の過去」を北山さんが手がけました。

個人的には霧切さんも北山さんも大好きなのでうれしかった!


ダンガンロンパ霧切 1 (星海社FICTIONS)
北山 猛邦 (著), 小松崎 類 (イラスト)

 

 

 

ほんわか爽やか風味だけど、中身はガチの本格ミステリ。

北山さんのさらなる新境地を楽しみたい方に。

 

北山猛邦『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』(講談社文庫)

 

 

 

 

北山猛邦さんと同じメフォスト賞を受賞された、蘇部健一さんのデビュー作『六とん』の第2弾。

SF設定や心温まる物語がいっぱい!

アホミスや下ネタもありますがそこはご愛嬌。


蘇部健一『六とん2』

 

 

 

『千年図書館』でSF短編にハマった人に超おすすめ!

心に刺さる物語。現代への風刺。

短編SFの登竜門的作品集。


星新一『ボッコちゃん』

 

 

 

SFショートショートの世界を満喫したい方に。

「優しいSF」の書き手、新井素子さんの極上チョイス。


新井素子(編)『ショートショートドロップス』

 

 

2019/5/27 更新

 

 

 

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