最初の猫は弟の膝に置いたら死んだ
またわたしは猫を殺したとも言える
もう一ヶ月以上が経っているが
最初の猫が死んだ現実感がない
平均寿命はとうに過ぎているのに
わたしが生きているのと同じくらい
当たり前に生きている気がしていた
とはいえわたしも癌が手遅れなら
今頃はいないかもしれなかった
弟も事故で自転車ごと飛んだし
母親も幼い頃に流行り病で危篤
父親に至ってはすでにいない
当たり前に生きている者はいない
否応なしに時代は移り変わる

当日は夕方まで確かに生きていたのに
もう死んだのだという事実が信じ難く
翌日になると昨日までいたのにと思う
つい事あるごとに様子をみてしまい
辛そうでないことに安堵してしまい
いや死んでいるのだと思い直す
呼吸で腹が動いているように錯覚し
冷たさと臭いに現実をつきつけられる
骨になった今も目が探してしまう
一ヶ月前までいたのにとも思うが
まだ居るような気もするし
もっと長いこと会っていない気もする

もういつの間にか居ることもない
食べること鳴くこと動くこともない
最初の猫にしてやれることはない
水やフードは母親がつまづいたりして
嫌がるので置かなくなったが
食べ物を少しずつ残す癖が抜けない
次の猫が死んだ時には残した食べ物は
最初の猫が見つけて代わりに食べた
今は時々地域猫が代わりに食べている
最初の猫と次の猫とは遠い親戚だろう
死臭の滲みたペットベッドは処分した