彼を見つけた時、救いだと思った。
昔読んだ「秘密」という漫画のなかで妄想の世界で生きるおばさんのエピソードがあった。辛い現実を美しい理想で覆い隠して生きるその姿を見て、私は自分のようだなと思った。この世界を直視して真っ当に生きたら心が壊れてしまう。美しいものは手に入らない。
けれどそれは脳が作り出す幻想でいくらでも覆せる。可愛いお洋服も、キラキラした靴も、誰もが振り返る容姿も、妄想の世界では手に入る。誰にも笑われることがなく、1人の人間として尊重される愛すべき人生。それで辛い現実を覆い隠して何が悪かったんだろうか。幻でも彼女には美しい世界が見えていたのに。
私は現実を妄想で完全に覆い隠すことはまだできない。きっとできたら楽になるけど、どこかでまだ希望を捨てれていないからなのだろうか?
鬱陶しい現実が全身を取り巻いて、睡眠不足から来る死にたい気持ちに押しつぶされそうになる。
だから、私には救いが必要だった。
最初から目を引く人だとは思った。赤い髪が印象的な、楽しそうに踊る人。彼のダンスが一番目を引いた。その後彼がメインダンサーなのだと知ってとても納得したものだ。 けれど、ファーストインプレッションはそれだけ。
次に彼を見た時は髪色が違う色になっていて、随分印象が変わるんだなと思った。挑発するように不敵な笑みを浮かべてパフォーマンスする彼は綺麗だなと思った。彼が歌う歌詞に敬拝という意味の言葉があるのだけど、なんだか良い言葉だなと思った。綺麗で美しい彼を敬拝できたらきっと楽しいのかなと。
そんな気持ちで他のパフォーマンスを漁った時、私は見てはいけないものを見て、聞いてしまった。
割といろいろ音楽は聞いてきた方だと思うのだけど、久しぶりに衝撃というか、ああこれは一生好きかもしれないという曲に出会えた。そしてMVがまた素晴らしくて。イタリアで撮影したらしいその映像は、まさに私の理想郷だった。
とどめはその時の彼のビジュアルだ。
私の大好きな金髪で、湖畔で儚げに佇む姿を見たらもう駄目だった。
ずっと探していたものの断片に出会えてしまったと思った。神に感謝したいくらいだ。本当に、世界で唯一の光に見えた。
今死ぬことは出来ないのだけど、死後の世界を思うことはできるのだという思考が脳を支配していく。私の今際の際に幻想でも何でも良いから、あの時の、金髪の美しい時代の彼に会わせてほしい。そうしたら私はなんとか今を生きていける。そんなことが頭の中を強烈に駆け巡っていく。
麻薬みたいだなと思う。けれど、それで生きていけるなら、誰も私のことを怒らないよね?
また夜更かしをして馬鹿なことを書いてしまった。
けど今書いたことは残念ながら嘘じゃない。このブログは嘘だらけだけど、今回だけは本当。上手く言えないのだけど、私は今の私の惨状ではなく、魂を救って欲しいのだと思う。だってこのまま不理解で終わるなんて悲しすぎるじゃないか。妄想でも何でも良いから1人くらい私の味方になってほしい。大丈夫だと言って笑ってほしい。
けどそれは無理だから。無理なことを私はちゃんと理解しているから。あの曲を聞いている間だけは、私の心を勝手に救ってもらった気になっている。
いつか今際の際に、バルゲロみたいなあの湖畔で待っていてくれたらな。どんなことを話そうか。何も話さなくて良いから微笑んでくれたらな。醜い私はそれだけで、浄化されるよ。
彼が過労死しませんように。
ついでに私も寝不足で死にませんように
おやすみなさい。