かなり御無沙汰しちゃいましたが,一応生きてます.
ただ,春の辺りででためまいの症状がぶり返したりして,色々とやる気がでなくなっていました・・・
祖父もたまにめまいがでることがあるようで,遺伝的な原因もあるらしく,完治は難しいようです
最近は少し落ちいてきたようなので,一安心ですが
バイクに乗ることに関しては支障がないのは不幸中の幸いかな
さて,このテーマもさっさと書き上げないとどんどん忘れていってしまうので,自分の為にも早く書き上げたいところですが,
いかんせん,内容がかなり多岐にわたるので,どこから書いていけばいいのやら
今回は,部品の採寸,ステムの設計を取り上げていきます.
まずは,新しいものを考えるより,元あった部品の採寸を行います.
元あった部品と干渉しないように設計する必要があるので,非常に重要な作業です.
ここで間違えると,後々干渉が発生して,どうしようもなくなることがありますからね
(ロボコンなら,あとで切り貼りすれば何とかなることが多いですが,市販のバイクに手を入れる場合,
なかなかそうもいきませんので)
また,特にシャフトの直径については厳密に1/100[mm]単位で測定する必要があります.
いわゆる,はめあいの問題なのですが,ハンマーだとかプレスで打ち込む部品はしまりばめになっていますが,
そのはめあい量は,直径や材質にもよりますが,2/100[mm]程度です.
(ちなみに,しまりばめとは,穴の方が,軸より直径が小さい状態のことを指します.
すきまばめは,逆にガタがある状態です.)
緩くてガタがあった方が,組みつけは楽ですが,振動によって軸と穴の間に衝撃が発生し,
異常な摩耗や,亀裂が発生する場合があります.
そのため,はめあいに関しては十分に注意して,計測・設計する必要があります.
ただ,現物から採寸する以上,多少の計測誤差は発生しますし,寸法公差はどこまで許容されているかは知ることができないので,
設計者の意図を汲む必要があります.
とりあえず,一番重要なステムシャフトから計測しています.
左が下で,右が上です.
表記が色々と適当なのは,諦めてくださいw
左端はステムベアリングのレースが圧入される部分なので,間違いなくしまりばめです.
あれ?その割には24[mm]より8/1000[mm]もマイナス気味なんですが・・・
これは,いわゆるh7と呼ばれる標準的な寸法公差な可能性が高いです
ステムベアリングのレースの内径は,15/1000[mm]ほどマイナス公差だったので,あまり深く気にしないことにします.
(教科書的には,穴がH7で,軸側がそれ以外ってパターンが多いのですが・・・実際のところはよくわかりませんね)
そして,その少し上のΦ23.19の部分は,特に軸受などはないので,直径は適当でよさそうです
その一段上のΦ22.425の部分は,ベアリングレースが入る部分なので,公差には気を付けたいところですが,
レース側がΦ22.5だったので,0.075[mm]程度すきまがありました.
ちょっと,ガタが大きすぎるような気がしますが,カブはもともと実用車なので,
生産コストを意識して,ゆるい公差になっているのでしょうか
どうせステムシャフトを作り直すなら,ここはもう少し詰めてもよいかもしれません.
そして,あとはねじと,ねじ山を削るときの逃げがあるようです.
ねじはM22のP1.0という特殊規格なので,旋盤でねじを切るのが手っ取り早そうです.
あとは,フォークの形状を適当にとっていきます.
これは,ノギスもほとんど使えないので,多少の計測誤差は諦めます.
もとから,それほどシビアな部分でもないので,あまり気にしなくても問題ありません.
(左上)フォークのステムシャフトがある部分の断面図と,
(左下)フォークのステムシャフトがある部分の左側面図,
(右上)ステムナットのカバーの外径≒フレーム側のステム部分の直径
(右下)フォークのステムシャフトがある部分の断面図(根元の辺り)
フォークの上端部分(ハンドルを接続するあたり)の各種寸法
こんな感じで,フォークを採寸し,それをもとにステムの設計を検討します.
上の寸法を見ればわかりますが,カブのステムシャフト周辺は非常に狭いです.
この中に,部品を納めないといけないので,構造にはおのずと制限が発生します.
一般的なスクーターでは,シャフト一本のみですべての荷重を支えるような構造
(ハンドルとフォークの間は,ステムシャフト一本だけで接続されている構造)
が主流ですが,カブの場合,ステムシャフトの直径がスクーターに比べると細いため,
その構造は不安が残ります.
(中実のシャフトであれば,一応問題ない程度の強度は出せますが,
万が一ステムシャフトが折れた場合,死亡事故になる可能性が非常に高いので,できれば避けたい)
そこで,この狭いスペースの間にステムシャフトに加えて2本のシャフトをいれた構造を考案しました.
具体的にはこんな感じ
ステム周辺を拡大すると,こんな感じ
強度的には,簡易的なシミュレーションを行った結果,
前輪のフルブレーキにより,1Gの減速度が加わった場合に,
ステムシャフトの最大応力は33.2[MPa]になるようです.
(ちなみに,追加のシャフトがない場合,最大応力は47.6[MPa]になります.)
ステムシャフトには,超々ジュラルミン(A7075-T6):航空機にも使用されるアルミ合金としては最高の強度を誇る材料
引張強度:575[MPa] 耐力:505[MPa] 疲れ強さ:160[MPa]
(引張強度→試験片に力を加えて,破断する寸前の強さ,ここまで力を加える前提で機械を設計してはいけない
耐力→力を加えたのちに力を除去したときに,試験片が0.2[%]伸びたままになるときの応力.この応力を繰り返し加えると,そのうち破断する
疲れ強さ→繰り返し与えても問題の無い応力の上限.実はアルミの場合,これより小さい応力でもいつかは破断するらしいが,1000年乗るつもりでもなければ,気にしなくても問題ない)
こんな感じでなので,疲れ強さを基準にすると,安全係数は5近くあるので,
上記の数値が静解析であることを加味しても,十分安全な数字だと考えられます.
最も,ストッピー(フロントブレーキを強く握りこんで,後輪を浮かせる技)を信号待ちの度に繰り返していれば,
そのうち折れるかもしれないですがw
最難関のステムの設計が終われば,あとはキャリパーサポートを設計する程度です.
キャリパーサポートも,とりあえず元の部品の寸法が分からないと設計仕様がないので,
同様に採寸します.
キャリパーサポートとピストンの位置関係
キャリパーサポートの形状
フォークの穴間
こんな感じで,採寸して,あとはCAD上で適当に調整すれば
設計したキャリパーサポート
はい,できましたw
途中の過程とか,色々な何かが抜けていたような気がしますが,こんなもんです.
ようは,干渉がなくて,パッドのすべての面ががディスクに接触するように設計すればいいだけです
出来上がったキャリパーサポートが,こんな感じ
材質はA5052(耐食アルミニウム合金)です.ジュラルミンは非常に錆やすい特性があるうえ,
高価なため,この素材です.
強度はジュラルミンの半分以下ですが,こんだけ分厚くしとけば,まあ大丈夫でしょうw
ちなみに,ねじ山にはインサートを入れています.
また,表面の模様は,エンドミルを走査線に走らせるとこんな感じになります.
フェースカッターで一発で仕上げた方が,加工はすぐ終わって効率的ですが,
RCV213V-S(ホンダが発売した2000万円のバイク)のトップブリッジがこんな感じになっていて,
かっこよかったので真似してみましたw
あとは,仮組してパッドが全当りするか確認します
ディスクにマジックで半径方向に線を入れ,仮組したパッドを押さえつけながら回しててみて,線の真ん中が消えれば合格です.
もし,端の辺りまで消えていた場合,パッドが余っている部分があるので,設計しなおしです.
パッドが余っている場合,パッドが摩耗すると,余ったパッド同士が押さえつけれれて,
ブレーキが利かなくなる恐れがあるので,この確認は必ず必要です.
ちなみに,PCXの社外キャリパーサポートの中には,パッドが全当りしなかったり,
肉抜き穴が大きすぎて強度不足で曲がったり,ねじ山が浅すぎたり,
あまりにも酷い製品が溢れているようなので,気を付ける必要があります.
(かといって,私のキャリパーサポートは丈夫過ぎますがwなんなら,軽ぐらいなら車でも使えそうw)
ブレーキ周りについて書いたので,ついでにPCXのキャリパーの3pot化についても書いておきましょう
その辺のブログで紹介されている方法では,外部にオイルラインを作ってやる方法が見受けられますが,
キャリパーの中にオイルラインを作ることもできます.
入手したキャリパーがこちら
実は,PCXではなく,DIO用のキャリパーですが,物は全く同じです.
で,どこに穴をあければいいのかという話ですが,
一番上のピストンを1番としたとき,1番と2番の間を3.5[mm]のロングドリルでぶち抜きます
ドリルの角度をミスると,ピストンが入る穴の側面に穴ぶち明けることになるので,注意が必要です.
(ピストンの側面に穴をあけても,ピストンで穴が塞がれているので,正しく機能しません)
ピストンの位置関係から開ける穴の角度を割り出し,
それを目安に最終的には勘で穴をあけましたが,うまくいきました
あとは,2番のピストンのオイルラインのねじは不要になるので,そこは適当なねじでふさげば問題ありません
私は,キャップスクリューにアルミワッシャーを2枚通して,塞ぎました.
ここまで書いたので,ついでにPCXのフォークに施した改造も書いてしまいましょう
PCXのフォークは元がPCXの14インチタイヤに設計されているので,17インチのカブで使用するには,寸法がギリギリになります.
具体的には,フルストロークした場合に,ステムとタイヤが干渉する危険性があります.
この問題を解決するための選択肢は2択で,
・フォークの全長を伸ばす
・ストロークを縮める
ストロークを縮めた場合,運動性能に影響が出る可能性があるので,あまり好ましくありません
ただ,カブのジオメトリの都合もあるので,フォークの全長もあまり大きく伸ばせません
(フロントの車高が上がってしまい,キャスター角が狂ってしまう)
そこで,ボトム寸前の領域のストロークを5[mm]減らして,フォーク全長を5[mm]伸ばす折衝案を採用しました.
ボトム寸前の領域のストロークを減らしているので,通常の走行ではハンドリングに影響は出ないはずです.
ただし,ボトム域でのストロークの余裕がなくなるので,激しいオフロード走行などは,自重する必要があります.
そんなわけで,このような部品を作成しました.
右下の銀色のワッシャーと,その左の切れ込みの入ったわっか状のものが作成した部品です.
ちなみに,銀色のワッシャーの奥にある部品は,もとからついているオイルロックピースです.
ばねは,リバウンドのばねです.
さて,この部品を,こんな感じで組みます.
オイルロックピースにリング状の部品をはめ込んで,オイルロックピースの下にワッシャーを挟んでアウターチューブに組み付けます.
こうすることにより,通常のストロークに影響を及ぼすことなく,ストロークや全長の調整が可能になります.
ちなみに,リング状の部品の内径はオイルロックピースの外径より少し小さめに設定してあるため,
フォークの内部でこの部品が暴れておかしなことになることはありません
ついでに,オイルラインの穴を追加して,ダンパーの特性を変更しています.
もともと,2セットだった穴を3セットにすることで,縮側の減衰力が2/3になります.
そこに,もとより粘度が1.5倍のフォークオイルを投入することで,縮側は元と同じ減衰力,
伸び側は元の1.5倍の減衰力が出るはずです.
少し,スポーティーなハンドリングを狙った設定です.多分.
もし気に入らなければこの部品は安価に手に入るので,とりあえず試してみればよいのです.
あとは,フォークを普通に組み上げれば完成
ちなみに,フォークのインナーチューブの抜け止めの溝は,もともとのものでは合わないので,
適当にグラインダーで追加しています.
大分長くなったので,次に続きます
つぎは,ステムの加工あたりから書き始める予定です.