3.安川の治水整備
(1)護岸改修
安川下流地点において目標の計画高水流量450m3/sを安全に流下させる河道断面を確保するための断面改修が行われている.計画では基本高水流量490 m3/sのうち計画高水流量450m3/s を河道に流下させ残り40m3/sは遊水地で貯留することになっている5).計画では改修区間内の瀬と淵を極力保全することにより魚類を含めた水生生物に配慮するとしている.ただし,河道内樹木(河畔林)の多くは流下能力を維持するために伐採されている.
1998年12月に始まった南部山橋付近での改修前後の状況を写真2に示した.安川は上流から土砂の流入が著しく,改修後にも土砂が堆積傾向にある.南部山橋周辺は,洪水が頻繁に起こるが,河道内には寄り州が再生しやすく,2年程度の期間で植物が定着している。
1999年6月29日の洪水では,南部山橋上流左岸に一夜で高さ約1.5m~2mの土砂が堆積し寄り州を形成した.写真2(b)と(c)を比較すると護岸ブロックの2段目まで土砂が堆積しているのがわかる.安川改修工事では,改修護岸(表法)勾配1:2としており,現法面より緩やかな斜面となる.植生ブロック997×997×300mm,重量347kgにより法面を保護し張芝(生芝)を行っている.護岸の植生ブロックは,全部で5段が設置され,写真2(b)に示すように最下段のブロックは河床に埋設している.
(2)河床(水際)改修
最下流部の安川大橋から行われた河床工事(カゴマットの設置)は共力橋までの1.2kmが2001年に完成した.これより上流の大町橋から安川橋の区間1.3kmは数年の内に行われる予定である.図2に標準断面図を示した(広島県広島土木建築事務所).
両岸に幅4mのカゴマット(割栗石)を設置し中央が幅8m~10mの流路となっている.写真3に河床工事完成直後と設置2年後の河川の状況を示した.河床工事(カゴマットの設置)の完了した安川大橋から共力橋の区間は概ね直線で変化が少なく単調な流路である.平水時には水深20~30cm,流速0.5m/sec程度となっている.河床工事前,冬季にはマガモ,コガモ,ヒドリガモの越冬が多数見られた.「安川のかもを守る会・安川古川野鳥調査記録」6)によると安川大橋~安中央橋間において1998年1月29日マガモ55羽,ヒドリガモ128羽,コガモ50羽が確認されている.2000年以降調査されていないが同会による観察では,近年飛来数の減少が確認されている.