くも膜は肉眼的には薄い結合組織性の膜であ り血管がないこと,および外表面を中皮(mesothelium) と呼ばれる内皮様細胞が覆っていることが特徴であ る. また,内面にも不完全な内皮様細胞が存在する [17] .具体的には,くも膜は電顕下で外側のarachnoid barrier layerとその内側にみられる狭義のくも膜 (loosely arranged arachnoid cell)に分けられる.外側のarachnoid barrier layerは扁平で40 μm以上の細長い細胞が2~3層 に走行し,互いに密着し隣接する細胞間にわずか200300Å(オングストローム:10-10メートル)の細胞間隙 が認められるのみである. 隣接する細胞間には多数 の接着班(デスモゾーム) ,細隙結合(gap junction)が存 在するが, arachnoid barrier layerをもっとも特徴づけ るのは,細胞間隙を閉鎖する密着帯の存在である.こ れにより,通常は髄液はくも膜下腔に留まることにな る.次に内側のloosely arranged arachnoid cellについて だが,この細胞は多くの突起を分枝して複雑な網工を なし,突起間にところどころ小腔を形成し,腔内には膠 原線維や弾性線維を有する. 隣接する細胞突起間に はデスモゾームあるいはgap junctionがみられ,さらに arachnoid barrier layerとの間にも同様の結合組織,特に gap junctionを認めるが, 密着帯は確認できない [18] . 一方,硬膜は極めて厚い膜で2葉よりなり,ともに緻 密な線維性結合組織で,特に外葉は弾性線維に富んで いる.脳硬膜の外葉は頭蓋骨内面を覆う骨膜の役目を し,ところにより外葉と内葉の間には硬膜静脈洞があ り,ここには静脈血が流れている.脊髄硬膜では内外 両葉の間に硬膜上腔が介在し,静脈叢や脂肪組織を含 んでいる. 狭義の硬膜は膠原線維の層状配列とその 間に散在する線維細胞から成る.Dural border layerは 狭義の硬膜の内側に数層の細長い扁平な細胞よりな る層で,細胞間隙は時にデスモゾームがみられるが, 密着帯やgap junctionはみられない.なお,いわゆる硬 膜下腔であるが, これは電顕的にはdural border layerと arachnoid barrier layerが密に接したまったく無構造の 部位で,まれにデスモゾームがみられても一般に細胞間接合は非常に弱く,少数のコラーゲン線維を含む無 定形物質のみが存在し,いわゆるスペース自体は存在 しないと言われている
以上大隣らによる硬膜解剖の説明である。結合組織とは所謂コラーゲンのことである。コラーゲンを摂取すれば硬膜の破綻が病態の根底である脳脊髄液減少症に対して極めて有効である可能性が示唆される。
