……ということで、3月24日(火)の夜の部と、
25日(水)の同じく夜の部、そして26日(木)の昼の部を
このたびの東京滞在の間に観ることができた。
昨年秋から忙しくて観劇の機会を逃し続けて来たので、
歌舞伎座は昨年10月以来、歌舞伎観劇としては1月の松竹座以来であった。
(↑どちらも観劇感想を書く暇は無かったので、この日記には記録無し)
時間の都合で、着いた日に夜の部から入って、翌日も夜の部だけ、
昼の部は、3日目の帰る間際に一度だけ観る順番になったので、
討ち入りが先で松の廊下が後になった(汗)。致し方なかった。
更にAプロBプロで配役が異なるので、どう組み合わせて観るかも、
遠征組としてはなかなか頭の痛いことだった。
結局私は、夜の部は両プロを観て、昼の部はBプロだけになった。
昼の部をBプロ優先にしたのは、
菊之助の、八代目襲名前として最後の舞台を堪能したかったからだ。
塩冶判官は、菊之助の祖父の梅幸の印象が、私にとっては強い役だ。
このうえなく品格の高い梅幸が、切腹の場面でうつむき加減になったときの、
頬のラインの美しさが、なぜか今でもとても鮮やかに記憶に残っている。
幼かった丑ちゃんが、今やこの大役を見事に務めるようになったかと
身内(←勘違い)みたいな感激があった。
美しく、冴え渡り、絹の手触りのような塩冶判官であった!
その美の中に、音羽屋の旦那さんとは違う持ち味が出てきたことを、
最近はとみに感じるようになり、それもまた嬉しく、胸アツであった!
松緑は昼のBプロの大星由良之助も良かったのだが、
私としてはこれは、十一段目まで演って貰わないことには、
あらしちゃんの由良之助がどうなっているのか、
自分の中で結論が出ないな、という気分になった。
何しろ、四段目の大星由良之助は忍の一字みたいな役なので。
その点、夜の部Aプロの小林平八郎は、圧巻だった。
相手が坂東亀蔵だったので、息もぴったりで、
どの角度から見ても完璧、完成された舞踊としての殺陣だった。
しかも最後に倒れるところが、間合いもかたちも超絶な美しさ!
松緑の描く体の線の魅力は、こたえられないものがあった。
時蔵は、昼Bプロは顔世御前、夜Aプロが女房おかる・遊女おかる、
様々な女性を見せてくれて、これまた素晴らしかった。
時蔵は何を演っても完成度が物凄く高い。しかも台詞が美しい!
勘九郎が夜の部の勘平を菊之助とのダブルキャストで務めていたが、
両者で型が異なるので、動きの違いも面白かったし、
勘九郎のほうが人情に訴える感じが強く、往時の勘三郎を彷彿とさせた。
愛之助が元気になっていたのは本当に嬉しく思った。
舞台姿や台詞からは、大怪我の影響は全く感じなかった。
十一段目のAプロの大星が愛之助、Bプロが仁左衛門で、
遠目には「若い孝夫と今の孝夫」(爆)だったが、
愛之助のほうにより強く色気を感じ、
仁左衛門には風格や威厳をありありと感じた。
仁左衛門の大星の七段目・十一段目は、もう、崇高なまでの舞台姿で、
どの一瞬もニザさまであった。
お声がややお疲れ?と微かに心配になった箇所もあったが、
いやこのような揺らぎも含めて大星由良之助か、という説得力もあり……。
大星の深い苦悩や、大いなる計略は、並大抵ではなかったのだから。
一方、若い人たちの活躍も良かった。
AプロBプロとも、昼の部の大星力弥は中村莟玉、夜の部は尾上左近。
どちらも美しかったが、左近のほうが顔立ちのせいかシャープな感じ。
昏さは見えるがドロドロでない亨さん(初代辰之助)、だった(逃)。
力弥は立ち役未満に女形をほんのり足したような役で、
瑞々しく涼やか、今の両名には本当によく似合っていたと思う。
しかしやはり圧巻は、最後の最後に登場する菊五郎の服部逸郎で、
なるほど馬に乗った役柄ならば、今の脚の不安も問題にならず、
しかも限りなく大きさの必要とされる役柄で、音羽屋の旦那さんならでは。
出てきただけで見事なまでの華があり、
豊かな、馥郁たる声音が響き渡って、まこと圧巻の位取り、
同時に、仇討ちは成ったかと尋ねる場面は、いかにも菊五郎らしい愛らしさ。
これほどの超大作を締(し)める場面は、音羽屋の力量あってこそ。
仁左衛門を見送る菊五郎、この最高の幕切れを、私は生涯忘れない!
……というわけで無事に三月大歌舞伎を楽しむことができたので、
私の次なる目標は、四月大歌舞伎の『無筆の出世』。
尾上松緑、講談シリーズ第3弾「無筆の出世」に意欲
「講談ファンと歌舞伎ファン、どちらにも喜んでもらえる作品に」(2025年3月27日 16時55分 スポーツ報知)
松緑による講談シリーズ第3弾、
講談の人間国宝・神田松鯉が歌舞伎座出演するという歴史的な公演でもある。
松緑と亀蔵のダブルキャストも見逃せないと思っている。
「亀蔵さんがいてくれなかったら、続けてこられたか分からない。必ずそばにいてもらいたい存在」
と、あらしちゃんが語る亀蔵さん、
お二方それぞれの持ち味が発揮されることと思い、大変楽しみにしている。