
平日4時という公演で、行けるかどうかわからず、
直前までチケットを買っていなかったのだが、
主人がマツダスタジアムにカープを観に行くことになったので、
私もこれ幸いと(殴)、この演奏会に出かけることにした。
『第4回 広島文化賞新人賞受賞者成果発表会』という位置づけで、
出身地の聴衆への挨拶の意味合いもあり、ピアノ・ソロ曲としては
一般によく親しまれている曲目を中心にプログラムが組まれていた。
また、彼女の友人でチェリストのカーリン・バーテルスを共演者として迎え、
定番のチェロ曲や、リヒャルト・シュトラウスのチェロ・ソナタもあり、
弦楽器との共演ぶりを聴かせて貰える面白さもあった。
第一部:リスト『愛の夢』第3番、『ラ・カンパネラ』
エルガー『愛の挨拶』作品12、ポッパー『ハンガリー狂詩曲』作品68
ラヴェル『ラ・ヴァルス』
第二部:シュトラウス『チェロ・ソナタ』作品6
全体の印象としては、今の麻未ちゃんの感性に一番添ってくれるのは、
やはり、ラヴェルやドビュッシーなどのフランスものなのだろうな、
という感じがした。
どの曲も、実にはつらつとした良い演奏ではあったが、
ラヴェルの『ラ・ヴァルス』になったら、曲との一体感が俄然上がった。
手の内に入っている、よほどの得意曲だったのか、
それとも彼女に今まさに「降りて来ている」曲だったのか、
背景は全くわからないが、この曲での彼女は自由自在に見えた。
また、アンコールのドビュッシー『亜麻色の髪の乙女』の、
瑞々しく叙情的な世界も、本当に素晴らしかった。
フランス風の、音の揺らぎやデリケートな和音の中に、
現在の麻未ちゃんの最も良いところが発揮されていたと思った。
チェロとの共演では、仲の良い二人らしく息がとても合っていて、
特に、冴えたリズム感には若い人ならではの魅力があった。
同時に、シュトラウスの二楽章の、チェロの内攻的な深まりも素晴らしく、
あのような曲になると、麻未ちゃんのピアノが歌うところも、
しっかりと堪能させて貰えて、とても良かった。
最後は、麻未ちゃんとカーリン・バーテルス嬢のトークがあり、
まずはカーリンがご本人の希望により特別に日本語で挨拶をし、
次に、二人がパリ音楽院の楽曲分析のクラスで初めて出会ったことや、
一緒に演奏をするようになった経緯など、いくつかの思い出を、
カーリンがフランス語で話し、麻未ちゃんが日本語に直し、それから、
「話すより弾いたほうが良い!」
ということになって、拍手の中、アンコールに移った。
曲目は、二人でドヴォルザークの『ユーモレスク』チェロ版、
ピアノソロでドビュッシー『亜麻色の髪の乙女』、
そして、改めて二人揃って登場し、
カーリンが日本の曲をやりたいと望んだから、とのことで、
「(よく知られている曲なので)曲名は、聴いてのお楽しみです」
と紹介されて始まったのが、成田為三『浜辺の歌』。
聴衆への配慮が行き届いていて、意欲的な挑戦も随所にあり、
なおかつアンサンブルの魅力も披露してくれて、
なかなか聴きどころの多い、良い演奏会だったと思った。
欲を言えば、いつかまた先のことで良いから、
今度は、サービスなどあまり考えずに、麻未ちゃんの弾きたい曲ばかりで
プログラムを組んでリサイタルをして貰えたら良いなと思っている。
現在の彼女の、感性の閃きとか音楽への没入などが、
麻未ちゃんの強い個性や魅力を支えていると思うので、
言葉は悪いかもしれないがもっと「自分本位」な演奏会があっても、
彼女なら良いのではないか、と聴きながら感じた。