一週間ほど前のことになるが、ピアニストのフランス・クリダが
79歳で亡くなったそうだ。
葬儀が、明日25日にパリの教会で行われる。
La pianiste France Clidat est décédée(la-Croix)
クリダは、私の祖父が最も愛したピアニストだった。
昔から祖父は彼女を贔屓にしており、FMで放送があるたびに録音して、
祖父編集による「フランス・クリダ全集」(に近いもの)が家にあり、
私もまた、クリダの弾くリストを聴いて育った。
当時は私は彼女のことを、リストの難曲を弾きこなす男勝りのピアニスト、
と勝手に思っていたが、後になってみると彼女はそういうタイプではなかった。
技巧的に見事であるというだけなら、ほかにも腕自慢のピアニストはいたし、
クリダ自身、テクニックが最大の武器というピアニストではなかったと思う。
どういう生い立ちの人であるか、私はほとんど知識は無いのだが、
音で聴くクリダは、とても「高級な」女性だった。
精神的な豊かさ、贅沢さこそが、彼女のピアノからあふれる美しさだった。
彼女の持つ「クラスの高さ」が、実によくリストに似合ったのだと思う。
祖父は趣味としてピアノを聴いており、FMからカセットテープに録音した、
世界各国の様々なピアニストの演奏を、作曲家別にではなく演奏家別に
詳細に記録を取って整理していた。
クリダ関係は、その中でも祖父にとって最も大切だったコレクションで、
最晩年まで祖父はこれだけは手放さなかった。
クリダ以外ではホロヴィッツの名演をいくつか手元に残していたが、
祖父は年齢を重ねるほどに、ほかのピアニストへの関心を失い、
私が祖父の家に遊びに行くと、クリダとホロヴィッツ以外は、
どのテープでもあげるから持って帰って良い、などと言ったりした。
そこで、デジュー・ラーンキなどをせしめて帰っていた、
ミーハーな女子中学生だったワタクシだった(汗)。
イーヴォ・ポゴレリチが、国際舞台に登場するどころか、
まだモスクワ音楽院の一学生だった頃の話だ。