朝起きて、ホテルの部屋でヒゲを剃っていた主人が、
「……ぁ?チャリが……?」
と呟いて、手を止めた。
チャリ、とは広島弁で『もみあげ』のことだ。
見たら、主人のチャリは、右側に較べて左側だけが、
えらく短く刈り上げられていた。
主人は数日前に理髪店に行ったばかりだった。
「短いだろうが!左だけ!」
と主人は気色ばんだ。
「なんやこれ!テクノカットかよ!しかも片テクノ!」
昨日までは家で鏡をろくに見ず、ひげ剃りも電気カミソリだったので
ずっと気づかなかったそうだ。
「ちきしょー。わかっとっただろうに、金取りやがって」
もう二度とあの理髪店には行かん、と主人は怒っていた。
なんしろ、一年の締めくくりの数日、
片テクノで仕事に行ってしまったわけだし。