テレビのアニメで『花咲ける青少年』を観た娘が、
「なかなかオモロいやん」と樹なつみ作品に興味を示したので、
私は、自分が一番気に入っている作品『OZ』を貸してやった。
樹なつみ氏に関しては、私は80年代に月刊LaLaで連載されていた、
『マルチェロ物語』を断片的に読んだのが最初だったが、
当時は、実は、あまり良いとは感じなかった。
今にして思えばこれは、『花咲ける―』よりもっと前の初期作品で、
部分的に、とてもドラマティックで惹きつけられるところもあったが、
全体としては、それが生かされていないというか、
ストーリー展開のぎこちなさが感じられて、入り込めなかった。
それと、・・・すみません、自分が描けないのに言って御免なさい、
デビュー当時のこの方、驚くほどカラー原稿がヘタで(逃)。
私は、プロで、あんな稚拙な着色を見たのは初めてだった(逃逃)。
それが、数年経って、たまたま職場の後輩から借りた、
単行本の『OZ』を読んでみて、私は、ドギモを抜かれたのだ。
こんな凄いものが、描けるようになっていたなんて・・・!と。
私はそのときになって初めて、彼女の才能を最初に見出した、
誰か知らないが当時の編集部の方々の慧眼に、心から畏れ入った。
樹なつみは、時が来ればこのように完成度の高いSFを、
――画力の点でもストーリー展開の点でも――創造できる人だったのだ。
この才能を初期の段階で感じ取り、彼女をデビューさせた人達は
やはりさすがにプロフェッショナルな編集者だったのだ、と思った。
(余談だが、後に、秋里和国の『ルネッサンス』を読んだとき、
『OZ』と世界観がとてもよく似ていることに驚いたのだが、
この二作は、年代的にもほぼ同じ頃に発表された作品だ。
『OZ』のほうが若干早かったと思うが、共通点は多いと感じた。
新世界の神になろうとする青年、不完全な人間をこそ愛する主人公、
永遠の命を得たいという人間の欲望、それを叶えると期待される科学、
等々、モチーフとしてよく似たものが、両作品には登場している。
勿論、それぞれの作者の個性と魅力はよく発揮されており、
完全に別個の作品であることに異論は全くないのだが。)
私は、一時期、『OZ』を宝塚でやればいいのに、と思っていた。
姿月あさとが主演していた頃の宙組を見ていて、よく、それを妄想した。
主人公の傭兵ムトーに姿月あさと、ヒロインのフィリシアに花總まり、
1019と1024に和央ようか、ネイトに湖月わたる。
扮装写真だけでも、やってみれば相当ハマったのではなかろうかと
今でも時々考えてみることがある。
実際には、この作品の舞台化は、宝塚ではなくStudio Lifeで実現した。
私は、ちょうど4年前、それの広島公演を見に行った。
Studio Lifeは脚本家が非常に優れているので、
原作のエッセンスを全く損なわない、ほぼ完璧な舞台化だったと
私は満足だったが、その分、限られた上演時間では話が込み入り、
原作を全く知らない場合は、難解過ぎると感じられたかもしれなかった。
・・・という訳で、今、娘は、春休みの最終日を『OZ』に費やしている。
これを初めて手にした日には、まさか自分の娘が、中学生になってから、
こんなものを読むようになるとは考えもしなかった(苦笑)。