ポゴレリチのロ短調ソナタ | 転妻よしこの道楽日記

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(この記録は、のちほどポゴレリチblogのほうに移すかもしれません)

拙サイトをご覧になった、とある方が、昨夜、メールで、
YouTubeに、このような↓動画がUPされていることを教えて下さった。

Franz Liszt 1/5 Sonata B Minor Ivo Pogorelich(YouTube)
Franz Liszt 2/5 Sonata B Minor Ivo Pogorelich(YouTube)
Franz Liszt 3/5 Sonata B Minor Ivo Pogorelich(YouTube)
Franz Liszt 4/5 Sonata B Minor Ivo Pogorelich(YouTube)
Franz Liszt 5/5 Sonata B Minor Ivo Pogorelich(YouTube)

93年収録とあるのが本当かどうか、私はやや疑っているのだが、
少なくとも93年冬のシーズンには、
ポゴレリチがロ短調ソナタをプログラムに入れていたのは確かだ。
どうしてこのようなものが残っていたのか不思議でならないが、
・・・いや、薄々、状況を察することは、できないわけではないが(逃)、
ともあれ、素晴らしく貴重な映像であることは間違いない。
なぜなら、ポゴレリチは、『ライブ収録』などという形態を
少なくとも80年代後半以降、公式には全く認めていないからだ。

ポゴレリチは、例えばグールドのように、
完成度を求めてスタジオ収録を偏重しているのではない。
彼は、演奏家は箱の中にこもるべきものではなく、
観客の前で弾くことこそが、真の喜びであるべきだと再三、述べている。
にも関わらず、彼が『ライブ収録』を嫌う理由は、
録音室でマイクに向かってCD用に弾く演奏と、
2000人の聴衆を相手にホールに響かせる演奏は、別のものであり、
両者でそれぞれ必要とされる要素を、
ひとつの弾き方で同時に満たすことなどできない、と考えるからだ。

I hate live recordings of the actual concert, can't stand them.
I never do them, and I will never allow them in my concerts.
No man can serve two masters; you can't please the microphone
and an audiene of the thousand people equally well.
You simply can't do both well at the same time.

("Great Contemporary Pianists Speak for Themselves 2",
p.240, Elyse Mach, 1988)

CDでのポゴレリチと、ライブでのポゴレリチは、
ひとりの演奏家の、それぞれ、全く別の部分であるということであり、
ポゴレリチを生で聴いたとき、そこに何が展開されるかは、
彼の演奏会に行かないことには、決して知ることが出来ないのだ。

しかし皮肉なことに、この映像は、ポゴレリチがライブにおいて、
恐るべき力量を発揮する演奏家であることの、
少なくとも断片を、確実に記録してしまっている。
実際、私は1989年11月に、初めて彼の弾くロ短調ソナタに接して、
その、あまりにも強烈な印象に、徹底的に圧倒されたものだった。
私は、ピアノという楽器の恐ろしさ、ポゴレリチの巨大さに打ちのめされた。
なんという途方もない世界を、自分は知ってしまったのだろうかと
あのときはしばらく立ち直れなかったものだ。
『ライブとスタジオは完全に別』という理由で
これほどの演奏でありながら決して認めようとしないポゴレリチは、
ある意味、実に狭量な完全主義者なのだと思う。

それにしても、どういう状況で撮ったかは敢えて訊かないが、
こんな、ポゴレリチのライブ映像を撮影するなどという、
千載一遇のチャンスに恵まれながら、
どーーーして、顔しか撮ってないんだよっっ!?
どういう表情だろうが髪型だろうが、演奏には関係ない、
んなことより、記録するなら、足だろ、足!!ペダルっっ!!!