官舎から見えるところに、ひとつ、テニスコートがある。
私はテニスをしないので(というより全然できないので)、
ここをどういう人たちがどういう手続きで使用するのかについて、
なんら、知識も関心もなかった。
ただ、毎週末ほとんど必ず、何人かの人たちが賑やかに練習に来ているし、
週日の夕方なども、ひとりでサーブ練習や壁打ちをしている人がいることには、
なんとなく気がついていた。
これについて先日、官舎の忘年会のとき話題になったのだが、
この練習に来ている人々というのが、ちょっと観察してみるとなかなか面白いのだ。
中でも、ひときわ目を(耳を)引くのが、練習の最中にときどき野太い声で、
「ああ~ん!ばか~ん!」
と言う男性がいることだ。
感じからすると、自分がミスしたり、相手にポイントを取られたりしたときに、
残念がってこういう声をあげているのだろうと思う。
プロの選手だってパフォーマンスをするから、
それ自体はユーモラスで、現場のヒトたちはなんとも思っていないのかもしれない。
だが、試合を見る訳ではなく、音声がメインの情報である我々にしてみれば、
パーン、パーン、ああ~ん!ばか~ん!
パーン、パーン、パーン、ああ~ん!ばか~ん!
が毎週末、半日以上断続的に聞こえるのは、結構笑えるというか腹立つというか。
もうひとり、我々の間で話題になっているのは、
この練習メンバーの中に、ひとり、とても華奢で爽やかな人がいるということだ。
野太い男性諸君の中にあって、この人だけがほっそりと小柄で、とても若く見える。
あるときなど、この人は自分がミスしたのか、相手に向かって、
「あ!先生、すみません!」
と謝っている声が聞こえた。
これを聞いて官舎・某棟の某夫人は思ったそうだ。
「若く見えると思った通り、あの人、学生さんなのね。
コーチと一緒に練習しているのかしら。熱心ね」
ところが、先日の忘年会のとき、別の奥さんの話からびっくりするようなことが判明した。
なんと、この若々しい人は現職の弁護士さんなんだそうだ。
とすると。
ここからは推測に過ぎないが、「先生」と呼ばれた相手も多分同業者なのだ。
なんのことはない、「先生」同志で、テニスしていたのだ!
あの練習メンバーって、もしかして、みんな「先生」?
ああ~ん!ばか~ん!のヒトも、やっぱり「先生」???