従軍慰安婦にされた少女像は、今日において何を象徴するものになっているかを考えてみました。
- 従軍慰安婦問題そのものの象徴
- 日本に戦争責任を訴える政治的な象徴
- 日本の戦没者たちの名誉を傷つける象徴
- 両国内でタブーにされてきたので女性蔑視を問う象徴にもなり得る。
思いついたことをすべて挙げてみると、少女像にはいくつもの面があり、今や多面的な存在になっていると言えそうです。逆に言えば、何も象徴しないと考えることには無理があります。
韓国人の活動家が日本大使館前や海外の各地、バスの中などに少女像を設置して訴えてきたのは、日本政府が誠実に責任をとる具体策をとり、日本国民がこの問題から目を逸らさず正面から学ぶことです。
しかし、日本政府が行ってきたのは基金創設と簡単な謝罪程度で、歴史認識にはまったく影響が及んでいません。実際、日本国民は従軍慰安婦問題についてあまり学んでいません。マスコミが従軍慰安婦問題をとりあげると右翼団体から脅迫されたりします。
最近では、文在寅政権が誕生してすぐに元従軍慰安婦への基金創設に関する合意が一方的に破棄されたり、韓国軍が自衛隊の哨戒機にレーダー照射をしたかしてないかといった揉め事が起きたりしてきました。そのため、従軍慰安婦問題についてよく知らない日本人が少女像を見ると、韓国が一方的に日本を敵視していることを象徴するようになってしまっています。
また、従軍慰安婦問題は韓国国内でもタブーにされてきたという面を持ち合わせています。日本男性の相手をしてきた女性だという見方をされてきたのです。そのため、当事者たちが声を上げ始めたのは、1990年代に入ってからでした。
昨日、テレビニュースで初めて知ったのですが、日本でも旧満州国黒川村で同様な被害に遭った女性たちが、近年ようやく真実を打ち明けるようになったそうです。旧ソ連軍に村人たちが無事に日本へ帰国できるようにしてもらう見返りに売春を要求され、皆の命を守るために意を決して要求に応じたと話しておられました。ところが、帰国してから彼女たちは労ってもらうどころではなく、むしろ軽蔑され、この事実はタブーにされてきました。
このように、従軍慰安婦問題には日本の朝鮮半島支配の実態を問うという面がありましたが、今日では韓国が一方的に日本を非難する象徴として日本側では見られてしまっています。これはあまりにも悲しいことです。少女像は今日では政治的な象徴になってしまってはいるものの、もともとは従軍慰安婦にされた女性たち自身による悲痛な訴えそのものを象徴していました。それを日本叩きの象徴とみてしまうと、日韓関係に決定的で修復不可能な亀裂を生じかねません。
そして、まさにそれが従軍慰安婦問題に対する日本人の関心のなさを表しており、韓国人活動家たちが日本人に対して苛立ちを隠せなくなってしまう根本的な原因にもなっているのです。そのような意味で「日本側から仕掛けられた」ことに本当になってしまいます。つまり、慰安婦にされた少女像を見て従軍慰安婦問題そのものの訴えを受け止めないで「日本人の心を傷つけるもの」としか捉えない措置をとると、そのこと自体が日本側の対応が不十分であることを証明することになってしまう。少なくともその難しさをまず自覚する必要があります。
朝鮮半島はかつては日本の領土であり、朝鮮人は日本人でした。従軍慰安婦にされた少女たちは日本人だったのです。その痛みを感じることができない行政が、現在の有権者の世論だけを気にして「少女像は日本人の心を傷つける」としか言わないのであれば、反日で集票する文在寅政権とどれほどの違いがあるのでしょう?
一方、韓国側にも問題があると思います。日本に対して政治的、経済的、軍事的すべての面で対抗する象徴が、どうして慰安婦にされた少女像にされるのでしようか?結果的にそうなっているとはいえ、どうして少女像にすべてを負わせるかのような形になってしまっているのか?おかしいと思いませんか?小さな少女の肩にすべてを背負わせてしまうのは、正面から訴えることができていないからではないですか?
確かに、1965年代の日韓請求権協定ですべて解決済みとされているので国際法上は、韓国政府から日本政府に訴えることができなくなっています。しかし、現代史を学ぶと、日本の戦後補償は十分だったとは言えないと思います。そのことは、欧州における戦後処理と比較すれば明らかです。日本をナチス・ドイツと同一視するのは間違っていますが、ヨーロッパ諸国と違って韓国・朝鮮人は戦後になって国民国家を一から作らなければならなかったので、どうしても不十分になってしまったことと思います。しかも、当時は東西冷戦時代。韓国は軍事独裁政権によって民衆の声が押しつぶされていた頃です。1990年代に入ってようやく実質的な民主化が実現してきました。そうした状況の中でようやく様々な真実か明るみになり、日本に対して戦争責任を訴える声が噴出してきました。だから、訴えたい、けれども訴えられないという問題でしょう。
日韓請求権協定が締結済みなので、通常の外交で日本政府に訴えることはできないのなら、他に方法がないかきちんと検討されてはいかがでしょう。慰安婦にされた少女像を世界各地に置いて訴えると、第三国から見ても少女像が反日の象徴になってしまいかねません。それでは問題がちゃんと伝わりません。有権者の支持率が上がるだけでは、問題は解決しませんし、解決しないとわかっていて支持率を上げるだけなら、それは被害者たちに対する背任行為になります。問題解決に向けてきちんと検討してください。
最後に、日本にとって戦争戦後責任の問題は、これから外交を活発化させていく北朝鮮との交渉にかかわってきます。したがって、従軍慰安婦問題についても、お国のために命を捧げた英霊たちに気を遣ってタブーにしている場合ではないのです。すなわち、拉致問題を解決するために英霊たちは何ができるのか?何もしないのか?そのことを私は英霊たちに直接問います。
