親分を殺(や)られた。さー出入り(殴りこみ)となるのだが、若者頭の三次は血を見るのも最小にしたかった。世間にもお上にも迷惑や手数をかけたくなかった。はっきり言うと喧嘩もしたくなかった。

実は殺られた親分にも非があった。自分が跡をついでも後々に遺恨を残したくなかった。しかしこの渡世の辛いところで、けじめだけは付けなければならない。親分の葬式を出しながら三次は作戦を立てた。

幼馴染の花火屋に相談した。
「強力な爆裂弾を作ってやろう」と義に篤い友人は勇んで言った。
「嫌々、丁度いいくらいの花火を選んでくれ」と三次は頼んだ。
花火屋は三次の用途を理解して花火を一個渡してくれた。

相手の一家はずーっと殴り込みに備えていた。喧嘩支度の長ドスと竹槍。三次は玄関の前で喧嘩の口上を終えると花火に火を付けて投げ込んだ。

哀れ、相手の一家は炸裂した花火で俄(にわ)かめくらにつんぼの、焼き鳥みたいになった。三次はまだぼけーっとしている親分にすたすた近づき「これはけじめだ」と長ドスで親分の小指を詰めた。そして手拭を千切って血止めをしてやり小指を持って帰った。小指は自分の親分の墓前に据えた後で埋めた。

仲介を頼んで手打ちとなり。新しい親分の三次と小指を詰められた親分は盃を交わした。
それからの三次の二つ名は「尺玉」になった。

みんな素人だから三次の使った花火が本当に一尺玉だったかは知らない。話しは大きくなるばかりだったが、三次はもうそのことは話さなかった。


                                               (Jan.26,2005)

 
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