「旦那、それは料簡違いだ!
お気持ちは重々分かりますが、お上のなさる仕事ですぜ」
長吉は商用で店を空けている間に一族を皆殺しにされた。両親も妻も子供も奉公人も・・・・

馴染みの博打の遊び客がいい歳こいて三下でもいいから盃をくれと言う。賊はあいつ等だとの気がするとも言う。道中で偶然にひそひそ話しが聞こえたとのこと。

「旦那は剣術が趣味だったから腕に覚えがおありでしょうが、この渡世には嫌なことも色々とありますんで、無理でしょう」

そんなこんながありながら盃をもらい三年が過ぎた。
「もう一端の博打打ちだ、旅に出なせー」と親分は送ってくれた。

所々の博徒の一家のお世話になりながら探索に精を出した。賊の一人を捕まえると徹底的に吐かせて私刑。殺(や)るには惨殺された一族の恨みを精一杯込めた。かっての家長としての長吉の一太刀一突きは一族の一人一人の魂の救済だった。

賊は七名で、その後解散したらしい。しかし二人で組んでる奴もいた。半殺しにして一人づつ吐かせて凄惨な私刑。

このようにして、又三年程後に仇討ちを終えて帰って来たとき、
「これからどうなさるね」と親分。
「盃を返させていただければ有り難いが」と長吉。
「それでこれから何を」
「行商からでもいいから店を再興したい」
「本当に見上げたお方だ。しかし私はあんたに代を譲ろうと考えている。あんたの性根がこの稼業で一番大事なところだ」

長吉は仇討ちの旅で博徒の世界に顔が広くなった。出入り(喧嘩)や盆(博打)にも磨きがかかった。賊の七名を凄惨な私刑にした。もう元のお店(たな)の旦那ではない。親分が前に言った嫌なことを実践してきた訳である。

そういうことで、商売にえらく明るい親分ができた。


                                               (Jan.28,2005)

 
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