器量が良くて気立ての良い娘ということで嫁にもらった。二代目の才蔵親分には嫁さんのお種の豹変が信じられなかった。痴話喧嘩にも刃物が飛び出す始末。

まるで軍鶏(しゃも)の雌。一家は揉め事を一つ抱えた状態になった。外に出れば喧嘩を売って来るの好き勝手。子供が出来れば大人しくなるかと思ったら、身内の全てを仕切るようになってしまった。

若者頭の善次以下も、少しぼーっとしている親分より、お種の言うことを聞くようになった。

喧嘩状が届いた。お種がどうしても長ドスを抱えて喧嘩に立つという。
「お前も母親なんだから少しは考えろ」
「私にも女の意地がある。晴らさでか」と引かない。

元々の火種はお種にある。町中で相手の親分に啖呵を切って、親分の顔を潰してしまった。それから双方の身内同士が険悪になった。

当日、相手の親分は「お種、今日という今日は覚悟しろ」
「今となっては遅いかもしれないが、女房の不始末は重々謝る。この通りだ」
何と才蔵親分はお種の顔を張り倒して膝ま付かせた。

さー帰ってからが大変。お種が夫に食ってかかる。
「あんたそれでもやくざかい。喧嘩状の相手に謝るやくざがこの世の中にいるのかい」

若者頭の善次以下の子分達は親分が大物に見え、又かわいそうに思った。又親分を少し軽んじていたと反省した。一同を代表して善次は言った。
「どうか親分を責めないでくんなさい。親分は渡世の仁義は十分に果たしている。喧嘩ばかりがこの渡世でもない。なんとか穏便にお頼み申します」

それからである。お種は賭場(とば)を仕切るようになった。鉄火肌とは良く言ったもので、殺伐とした堵場になった。親分の才蔵はせめてもお客のもてなしにと甲斐甲斐しく働いていた。お種が次から次と子供を孕む間が才蔵の心の休息だった。


                                               (Feb.26,2005)

 
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