何事も「苦しゅうない、良きにはからえ」だった殿様が、今度のお国入りから急に細かくなった。国許の事の大から小までを糾(ただ)す。
江戸家老が変な入れ知恵をしたのだろうと疑われた。その後も殿様の頻繁な江戸表との文通が続いていた。国許はうっとうしい気分になった。
小姓組々頭の正次郎だけが知っていた。殿様は隠居を考えていて、
「この際憎まれ役になる」と腹を括り、藩政を世子(若殿)に譲る準備をしていた。
可哀相なのは無実の江戸家老。藩内の非難が集中した。刺客を送ろうかとの物騒な話しまで出た。
とかく封建制度というものの下では、主君と家臣の騙し合いというのも多い。マキャベリズム。
文通は殿様と若殿とのものだった。若殿は江戸表で集めた情報などを殿様に知らせていた。殿様は正次郎一人だけを参加させることにしていた。
世代交代に伴う変化は実に見事なものだった。大改革といっていい。国家老以下の重臣達のみでなく下々にまで及ぶ大人事異動。それで国許も江戸表も改めて分かった。主君は怖い。
まだ若い側用人となった正次郎は諫言しようとした。
「主君と臣下のこのような関係は決して美しいものではない。若殿には普段から言うべきことは言っていただこう」
隠居した殿様が正次郎を掴まえて言われた。
「待て正次郎、昔わしの時も父上がそうされたのだ」
「ああ、これが我が藩の帝王学か」と正次郎は一人言した。
「そう言えば前の国許の筆頭家老は狸に、江戸家老は狐に似ている」と思えてきて笑ってしまった。
(Feb.28,2005)
江戸家老が変な入れ知恵をしたのだろうと疑われた。その後も殿様の頻繁な江戸表との文通が続いていた。国許はうっとうしい気分になった。
小姓組々頭の正次郎だけが知っていた。殿様は隠居を考えていて、
「この際憎まれ役になる」と腹を括り、藩政を世子(若殿)に譲る準備をしていた。
可哀相なのは無実の江戸家老。藩内の非難が集中した。刺客を送ろうかとの物騒な話しまで出た。
とかく封建制度というものの下では、主君と家臣の騙し合いというのも多い。マキャベリズム。
文通は殿様と若殿とのものだった。若殿は江戸表で集めた情報などを殿様に知らせていた。殿様は正次郎一人だけを参加させることにしていた。
世代交代に伴う変化は実に見事なものだった。大改革といっていい。国家老以下の重臣達のみでなく下々にまで及ぶ大人事異動。それで国許も江戸表も改めて分かった。主君は怖い。
まだ若い側用人となった正次郎は諫言しようとした。
「主君と臣下のこのような関係は決して美しいものではない。若殿には普段から言うべきことは言っていただこう」
隠居した殿様が正次郎を掴まえて言われた。
「待て正次郎、昔わしの時も父上がそうされたのだ」
「ああ、これが我が藩の帝王学か」と正次郎は一人言した。
「そう言えば前の国許の筆頭家老は狸に、江戸家老は狐に似ている」と思えてきて笑ってしまった。
(Feb.28,2005)
