全日本柔道選手権大会の選手には教職員や実業団(社会人)が多い。一方全日本剣道選手権大会ときたら実質的に全国警察官大会。どうしても不思議でならない。おまわりさんの剣道のレベルは非常に高い。

閑話休題。与力や同心の町方役人にも剣術達者な者が多かった。平和な時代でも危険な職業だったからだろう。鉄刀という刃を付けてない重い武器があったという。同心はこれで刃物を持つ賊の骨を断ち割ったという。生きて捕らえるのがご定法とはいえ凄い話である。

定廻り同心となった石橋健之進は少し得意だった。同心見習いから独立できて、手先の親分も二人いる。その手下もいれると七人になる。
「ちょっとした賊なら軽いもの」と思っていた。

老練な親分の一人が強盗団の様子を掴んで来た。
「旦那、お奉行所に応援を」
「否、賊のもっと詳しい情報を得てから」
しかしもう事態は進んでいた。暫くして見張りに付けていたその親分の手下が注進に来た。
「賊は泥棒宿から出て今頃は狙いの近江屋に近づいているところ。大小に覆面姿の浪人者も多い。奉行所の捕り方出役を」

「分かった。お前は与力の中山様に今の通り申し上げるんだ。親分。十手じゃどうしようもない。長い棒か梯子でも見つけて付いて来い」
健之進はやっと間に合った。賊が裏木戸から近江屋に入ったところであった。
外から「町奉行所である。神妙にしろ」と怒鳴った。丸太の杭を片手に抱えた親分も呼子を鳴らしながら到着した。

「近江屋の主従が危ない」と健之進は腹を括って中へ入った。一瞬ぎょっとした。何と大小が六名に長ドスが四名。
「親分、危ない。杭の尖った方を突き出して間合いを取れ」
十人がかりの切り合いだが健之進は峰打ちだった。
「旦那、峰打ちでなくて切っても構わないんだ」と親分。
「親分、生きて捕らえるのがご定法だ」と峰打ちを決めていった。

健之進と親分が倒した賊たちを近江屋の主従が袋叩きにして縛った。
後で「旦那の剣術の腕前は分かったが同心としてはまだまだだ」と親分。


                                               (Mar.31,2005)

 
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