満開の桜の花の下で、幾三は孤独だった。このまま江戸を発って越後の在所に帰れば、やはり桜の花には間に合うだろうとも考えた。
この二十余年の間に江戸で色んなことがあった。丁稚奉公。米搗き、風呂屋の湯沸し、そして先代の親分や同心の旦那に拾われて捕り物の世界へ。手下を長く勤めて親分にもなって妻子も持った。しかし意趣返しで妻子を殺された。執念の探索の末に相手をお縄にし獄門台に晒した。
「空しい」の一言。満開の桜の花を見ると俺の人生は何だったのかの感慨。
「幾三親分、あんたの今の気持ちはよく分かるよ」とお奈美。お奈美は博徒の女親分だった。幾度か手入れの目こぼしで幾三に恩義を感じていた仲だった。
「親分、私と新しい人生を考えないかい。これから面白いこともあるよ」
「稼業が合わないやい」
「男女の仲で稼業はないだろう」
同心の旦那に言われた「お奈美は本気だ。博打は程々にやれ」
お奈美と同心の旦那のペースに乗せられて新しく所帯をもった。取り締まる立場だが博打はやってみると面白い。
「いかん、旦那に言われたように程々にだ」
お奈美の博打の腕前には恐れ入った。ほぼ完全に目が出せて読めた。しかし普段は親張りはせずに客同士を楽しませていた。自然「盆暗(博打に弱い)」の幾三はお客の持て成しが役割になった。そして賭場にも馴染んで二足草鞋の親分となったらお客の様子が益々よく見えてきた。子分達も役にたった。
捕り物に繋がり検挙率が上がった。
「元々盆暗の親分でも益々役に立つと思っていたよ」と同心の旦那。
「そりゃー旦那、言い過ぎだ」と幾三。
(Apr.7,2005)
この二十余年の間に江戸で色んなことがあった。丁稚奉公。米搗き、風呂屋の湯沸し、そして先代の親分や同心の旦那に拾われて捕り物の世界へ。手下を長く勤めて親分にもなって妻子も持った。しかし意趣返しで妻子を殺された。執念の探索の末に相手をお縄にし獄門台に晒した。
「空しい」の一言。満開の桜の花を見ると俺の人生は何だったのかの感慨。
「幾三親分、あんたの今の気持ちはよく分かるよ」とお奈美。お奈美は博徒の女親分だった。幾度か手入れの目こぼしで幾三に恩義を感じていた仲だった。
「親分、私と新しい人生を考えないかい。これから面白いこともあるよ」
「稼業が合わないやい」
「男女の仲で稼業はないだろう」
同心の旦那に言われた「お奈美は本気だ。博打は程々にやれ」
お奈美と同心の旦那のペースに乗せられて新しく所帯をもった。取り締まる立場だが博打はやってみると面白い。
「いかん、旦那に言われたように程々にだ」
お奈美の博打の腕前には恐れ入った。ほぼ完全に目が出せて読めた。しかし普段は親張りはせずに客同士を楽しませていた。自然「盆暗(博打に弱い)」の幾三はお客の持て成しが役割になった。そして賭場にも馴染んで二足草鞋の親分となったらお客の様子が益々よく見えてきた。子分達も役にたった。
捕り物に繋がり検挙率が上がった。
「元々盆暗の親分でも益々役に立つと思っていたよ」と同心の旦那。
「そりゃー旦那、言い過ぎだ」と幾三。
(Apr.7,2005)

