
「貴様はやくざか。丙種合格!・・・・非国民め」
明は倶梨伽羅紋紋(刺青)を背負っている。
衛生曹長に一発顔をはられて、兵役からは撥ねられた。
まだ二十歳の若さだった。
「やくざって訳でもないのによ。おれっち鳶の男伊達が分からないのかよ」
もう博徒や香具師しか彫り物をしない時代に明は大枚を叩いて刺青をした。
歳をとった古い仲間のそれが格好いいと思ったからだ。
明が喧嘩の傷害罪で懲役をつとめている間に戦況は変っていた。日中戦争から太平洋戦争へと・・・・。
出所して組に帰ると南方に行くという。飛行場を作るのだとのこと。
「何だ、兵役に行くのと同じだな」と明。
実際そうだった。前科もちであるとの噂が広がり、軍人達も明の倶梨伽羅紋紋には一目置いた。
敵が上陸してきて明は死んだが、倶梨伽羅紋紋は無傷だった。見事なタツー(刺青)に魅せられたアメリカの軍医が明の皮を剥いで本国に持ち帰った。
(Jan.14,2005)