

若旦那は仕事熱心で趣味は学問。
「家の跡取りは商人のくせに辛気臭くていけない」と大旦那。
親子して花街に繰り出した。大旦那は親としての教育だとの言い訳。
舞っている若い芸者達の目付きが違っていた。色男の若旦那に集中。きっと母親に似たのだろう。大旦那は鬼瓦みたいな顔。
ところが若旦那には芸者達の容貌がよく見えない。
仕事と学問のし過ぎで近目。
「美人ばっかりだろう、もっと楽しそうにしろ」と大旦那。若旦那は「はー、父上」と素直に従った。
流石に酌をしに近くへ来ると芸者達の容貌は分かる。
「父上、この女人は美形ですなー」と言ったのがいけなかった。大旦那の手配でその夜は、その芸者に童貞を捧げることになってしまった。
さーそれからである。若旦那へのその芸者の入れ込みよう。朝からお店に通ってくるし、付け文はするし。若旦那は「父上、しかじか」と報告。こういうことを妻が嫌うので大旦那は困った。
「跡取り息子には良家から美人の嫁を」とやっきで探し回っている。
大旦那が調べるとその芸者は本名をお菊といい、純で別に困った問題はない。しかし妻が嫌う理由も分かる。実はその昔大旦那は醜男過ぎて嫁の来てが無かった。
金にあかして手に入れた妻が芸者だった。もしそれを言うと夫婦喧嘩になる。
花街では昔のことを知っている人達も多い。気を利かした太鼓持ちがお菊の恋に加勢した。朝からお菊と連れ立ってお店に出向いた。大旦那もその妻も若旦那もいた。
「お久しぶりでお姉さん、あいも変わらずお美しい」
妻女は「朝っぱらから何てことを」と太鼓持ちとお菊を引っ叩いた。三人の言っていることは分かるが、縺れ合うのが若旦那には良く見えない。
「父上、母上が二人いるような」
「そうなのだ、お前の母親も昔は芸者だった。こうなりゃお前の嫁はお菊に決めよう」
(Apr.24,2005)