長らく書棚に眠らせていた本書だが,気が向いたので一読を試みた.
 

 おそらくアーレントが的にかけたのは,ポリス = 公的領域 that require [多数性, 他者性, 差異性] to その領域を往き交う言動 と その領域を往き交っていた[多数性, 他者性, 差異性]縛りの言動が古代ギリシャとともに滅亡したということだろう.

  「政治的」という語句を「社会的」としたラテン語訳と軌を一にして,かつて公的領域と称ばれていた領域が社会的領域に変質した.社会的領域は,[多数性, 他者性, 差異性]ではなく,[画一性]をrequireする その領域を往き交う言動に対して.

 

 社会的領域は我々世代の日本人であれば,世間と訳されれば解り易い.

 

 じぶんが憎んでいたのは,世間 = 社会的領域.その領域を往き交う言動に対する要求やそれを是認する連中だったのだ.

 

 アーレントが唱いあげたのは,失われたポリスへのラヴ・ソングだ.おれが『The Brilliant World』という楽曲に登場させた「領土持たざる國」はポリスのような場のイメージだった.

 

 仕事の理念性は揺るがない.[真, 善, 美]への意志を持つ個体群は全滅しない.

 活動の理念性も揺るがない.良心の自由に基づいて,[多数性, 他者性, 差異性]を意識した言動を心掛ける個体群も全滅しない.

 

 期せずして,見晴らしがよくなった.