山口 猛は云った.たけしに対し,『ソナチネ』について,「討ち入りは要らなかったのではないか?」という旨のことを.

それは,違う.

あの作品は,実に<人間的>なものを描いている.村川は,クレオンに対してノンと拒否するアンチゴーヌや天界に牙を剥きつづけたプロメテウス.

茶番につきあうことに辟易している主人公が,またしても茶番に巻き込まれてしまう.気づいたときには,試合については敗けが決まってしまっていた.そこでイヌネコ同様カタカナ表記されるヒトで終わりたくない<人間>ならどうすべきか?

『ソナチネ』も『その男、凶暴につき』も同じ主題について語っているということを,十代の頃の私は直感していたようだ.