アニメ版の葬送のフリーレンを鑑賞しましたので、レビューしてみます。
(2024年1月30日 投稿)

(2024年3月22日 追記)

  • 作品の概要
★★★★★5/5(→★★★★☆4/5)

勇者、僧侶、戦士とともに魔王を討伐したエルフの魔法使いフリーレンが主人公のお話です。これだけ話すと、チープななろう系のファンタジーアニメを想像してしまいますが、この作品の魅力は人間の心の描き方にあり、実際はヒューマンドラマ系とでも言うべき作品です。

主人公は1000年を超えて生きるエルフで人間とは時の流れの間隔が全く異なります。勇者たちにとっては10年という長き時、それも魔王討伐の旅という最も濃密な時を共にしたかけがえのない仲間ですが、主人公にとっては「ほんの一時期一緒に旅をした良く知らない人」という認識でした。しかし勇者らが老衰で他界した後になって、実はその10年が自分の心にも大きく影響していたことに気が付き始め、彼らのことをもっと知りたかった、ひいては人間のことをもっと知りたい、と考えるようになり、勇者らの足跡をたどる旅に出る、というストーリーです。

 

(以下追記)と、上記のように前半はすぐれたヒューマンドラマなのですが、なぜか後半になると一気に陳腐なバトルものになってしまいます。バトルも決してつまらなくはないのですが、かといって特筆すべき面白さがあるわけではありません。前半は文句なしで★★★★★5/5ですが、後半1/3だけ見れば★★★☆☆3/5といったところです。

  • 作品の良いところ
兄弟愛、師弟愛などの美しいストーリーが、未だ戦禍に見舞われる世界で切なく描かれます。特に兄弟愛を描いたシーンでは思わず涙ぐんでしまいました。「思いっていうのは言葉にしないと伝わらないんだよ」、そんな陳腐で簡素な、しかしとても大事なメッセージが、ひしひしと伝わってきます。合理主義でしかものを考えられない魔族や、人の気持ちを理解していなかった80年前の主人公と対比して、現在の主人公と仲間たちの関係性が描かれているので、人の心の在り様というのが際立って感じられ、とても面白いと思います。
  • 作品の良くないところ
勇者、僧侶、戦士、魔法使いの4人で魔王を討伐しました、という設定からも分かるように(もちろんファミコン時代のドラクエに対するオマージュなんでしょう)、ファンタジーとしての設定は非常に稚拙です。作品の魅力はそこにはないので別に問題ではないのですが、本格的なファンタジーを期待すると肩透かしをくらうでしょう。
また作品全体に躍動感はありません。ほとんどのシーンは主人公と仲間がほのぼの会話しているだけで、せっかくのファンタジーですがバトルシーンは少なく、出てくる魔法の種類も少ないです。
どちらも敢えて書きましたが、作品の欠点というほどではありません。あくまで主人公や仲間の心の成長を描いた作品なのであり、ファンタジーやバトルを期待してはいけない、というだけのことです。
(以下追記)上記の様にバトルシーンが少ないのは決して悪いことではなかったのですが、後半になると逆にヒューマンドラマは影を潜め、どんどんバトルシーンが占める割合が多くなってしまいます。そもそもバトルが多くなる理由が、目的地に行く途中の道を通るためには資格を取る必要があり、その資格試験を受ける、というやや無理がある設定です。そしてその資格試験が全話数の三分の一程を占めているので、もう何の旅をしていたのか良く分からなくなってしまいます。そしてそのバトルシーンですが、つまらないという程ではありませんが、特段魅力的という程ではありません。上にも書いたような魔法の設定があまり深くないので、展開に複雑さがなく、かといって爽快さもないのです。
  • まとめ
前半に関しては、ファンタジー系アニメにしては珍しく、ヒューマンドラマに主眼を置いた作品で、とても面白いと思います。その点では今期では最高のアニメです。
(追記)ただし後半のバトル要素に関しては、やや陳腐と言わざるを得ません。個人的にはヒューマンドラマを貫いてほしかったです。