2021年のアニメなので今更なのですが、Amazon Primeで観てみたので、一応備忘録としてレビューしておきます。
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ストーリー概要
世界中の“個性”保持者の殲滅を目論む謎の組織・ヒューマライズ。彼らが各国に仕掛けた、“個性”を暴走させ崩壊に導く爆弾<個性因子誘発爆弾>から人々を救うため、世界選抜ヒーローチームが結成。ヒーロー事務所でインターン中だった雄英高校ヒーロー科も招集され、各地で爆弾の回収任務にあたっていた。デク・爆豪・轟も、日本から遠く離れた国<オセオン>で作戦行動中、ある事件に巻き込まれたデクがなんと全国指名手配…!事件をきっかけに出会った運び屋の少年・ロディとともに、オセオン警察、そして謎の敵からも命を狙われることに。そのとき、ヒューマライズの指導者フレクト・ターンからの犯行声明が全世界に届く。「タイムリミットは今から2時間」ヒーローチームは絶体絶命の状況下で、危険を顧みずに各地の爆弾の回収に向かう。(C)2021「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (Amazon説明文より抜粋)
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作画、ストーリーの導入は良い
作画自体は流石映画版といった感じで迫力のある絵で楽しめました。今回のヴィランであるヒューマライズは、ヒーローを殲滅するために、無差別テロを装って各地に爆弾をしかけ、さらにその爆弾の大まかな所在を公開することで、集まったヒーローを一網打尽にしようとします。ヒーロー側も罠と知りつつも無視することもできず、爆弾の解除と市民の避難誘導にあたります。ここら辺の展開は上手くて出来ていて納得感があるものでした。
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脚本はいまいち。デク、ヒロアカの魅力を活かせず
しかし、主人公らの活躍シーンの脚本はかなりイマイチです。冒頭、デクは今作のもう一人の主人公であるロディと追いかけっこをするのですが、何の個性も使っていないロディに対してワンフォーオールと黒鞭全開でも追いつけません。しかもロディは荷物を持っているというハンデすらあるのに。スパイダーマンばりの挙動で一般人においつけないのは不自然すぎますよね。
さらに、今回のラスボスの能力が、「衝撃を全て反射する」という能力なんですが、デクは何の打開策も見出さないまま、ひたすらワンフォーオールで殴り続けボコボコにされます。最終的な解決は「吸収しきれないほどの威力で攻撃する」です。デクは本来そんな脳筋キャラじゃありません。もともとはひ弱で、自分の足りないところを良く知っていて、ただヒーローの個性に関する知識だけはずば抜けていて、その知識や優れた状況判断力、機転によって戦ってきたタイプです。言ってみればNARUTOのシカマルのようなキャラです(もっとも最近は基礎能力自体がかなり向上してしまいましたが)。見ている側も、それが面白かったのです。それが、気合と筋力で全てを解決する、みたいな展開はちょっと呆れてしまいました。衝撃を反射するのであれば、衝撃を与えないように黒鞭で拘束すれば一発解決です。序盤あれだけ黒鞭を使ってスパイダーマンしていたのに、後半からはデクも脚本家も黒鞭の存在を全く忘れてしまったようで、一切使わないのです。
今回は轟と爆轟が副主人公として登場しますが、彼らの活躍もぱっとしません。ぽっと出の名前も分からない雑魚相手に散々苦戦し、漸く勝利するもほぼ相打ちといった感じです。能力の相性が特段悪いというほどでもないですし、何よりも相手の情報が何もないため、苦戦に説得力がないのです。名前がないどころか、口もろくに聞かないですし、立ち居振る舞いなどが如何にも噛ませ犬っぽい感じで、なんという個性なのかも明かされませんから、彼らがどれくらい強いのか分かりません。せめて轟と爆轟が来る前に、先着したヒーローを全滅させているとか、もう少し強敵と戦っている感を出してほしかったです。
さらにそれ以外の雄英の生徒やエンデヴァーなどのヒーローに関しては、今回は全くの端役です。ちょっとだけ画面に映っていたなという程度で、一切何の活躍もありませんので、そこもまた残念です。究極、今回のストーリーはデク、ロディ、轟、爆轟、ラスボスと、あとは名前も知らない敵役が数人もいれば普通に成立してしまうのです。せっかく個性的なキャラクターが多いヒロアカなのに、数人だけでこじんまりと話を進めてしまっているところが残念です。
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総評:ヒロアカの魅力は活かせてないが、単品のアニメ映画としてはまずまず
結局脚本家が、デクの魅力、ヒロアカの魅力というものを今一つ理解できず、ヒロアカっていうのは取り合えずで「プルスウルトラ」と叫んで気合と根性で乗り越えてしまうお話、とでも思っているのんじゃないかなぁ、と思わせる作品でした。
酷評しましたが、とりあえずアニメ映画としては大きな破綻もなく、原作とも大きな齟齬があるわけでもなく、とりあえず観ておいて良い作品かとは思います。