概要

 

体の中で働く細胞を擬人化したアニメです。ちょっと古いアニメですが、一時期話題になったものの観たことなかったので、今回初めて鑑賞しました。体の中に侵入してきた細菌やウィルス、そしてがん細胞などに対して、体の細胞が戦う様子を描いています。ちなみにタイトル詐欺(笑)。「はたらく細胞」ではなく「はたらく血球」というのが正しいタイトルです。☆☆★★★(3/5)

 

 

  優れた点

 

 軍艦ですら擬人化されてしまう世の中、何かを擬人化するのはそれほど珍しくないのかもしれませんが、それでも細胞を擬人化して描くのはとてもユニークなアニメだと思います。それぞれの細胞の役割が分かりやすく説明され、体の中でどんな血球がはたらいているのかを、楽しみながら知ることができます。

 また、ウィルスに感染した細胞や、コピーミス等によりがん化した細胞は容赦なく処理されていくのですが、細胞を個人として見ると、病気になったり異常があるからって簡単に処分してしまうのは倫理的にどうなの?と問いかけるシーンもあり、ちょっと面白い視点だなと思いました。

 

 

  欠点
 


もともと少年誌掲載の漫画であり、その内容は子供向けです。しかしながら子供向けとしては不適切な描写が見られます。白血球は細菌を見つけると常に「シね!コロす!」と連呼します。1シーズンの中で「シね」「コロす」という単語は本当に何十回と聞きます。そして倒された細菌は毎度毎度、血飛沫を上げて倒れるのです。当然細菌の中にはヘモグロビンなんてありませんから、科学的にも誤っており、なぜこのような描写にしたのか疑問です。

 

また作者はもともと医学知識はなく、特に医学的な監修も受けていないようで、少し医学知識がある人から見てみると、科学的に不正確な描写が満載で違和感があります。

 

いくつか例をあげると、まず冒頭にも述べたように血球系以外の細胞はほぼ全て「一般細胞」と呼ばれ、分裂する以外に仕事が無いかのように描かれます。もちろん、実際には血球が特別ということはなく、役割の無い細胞などいないでしょう(アニメ的には移動しない細胞は描きにくいというのは分かりますが)。

 

それに体の「内」と「外」の概念が曖昧です。胃や腸など消化管の中というのは、マクロの視点から見ると体の中ですが、ミクロのレベルで見ると体の「外」になります。そして体の防御システムというのは非常に良くできていて、基本的には普段「中」には菌が入ってこないようになっています。これは非常に重要な概念なんですが、このアニメではそこの描写が曖昧で、結構簡単に細菌が体の「中」に入っているので、違和感があります。

 

 

  総評

 

無駄に残酷描写さえなければ、子供向けに血球の事を知ってもらい、さらには医学や科学に興味を持ってもらうきっかけとしてとてもオススメのアニメなのですが、残念です。逆に大人には科学的に不正確な描写、幼稚なストーリーなどが物足りないと思います。