朝永振一郎氏の

『量子力学と私』におさめられている一節、

ドイツ留学時代に書き留められていた

「滞独日記(抄)」を読む。



のちにノーベル物理学賞受賞('65)で世界的に認められ、

量子分野で永代に名を残し尊敬されるようになる人でも

一体自分は何をやっているのだろうかと嘆いたり

同じところをグルグル回って悩んだり

逃避したくなったり

何も手につかなくなったり

うまくいかない計算式に眠れぬ夜を過ごしたり

ライバルたちの活躍を面白く思わなかったり

科学の成れの果てを批判したり・・・と

キレイゴトとは対極の、

焦り、虚無、嫉妬、迷い・・・など

心の闇や苦悩があり、

それをあるがまま書かれた日記に

共感する人も多かろう。


巷でよく売られている

ビジネス書的な成功哲学本にありがちな

‘陽性’‘前向き’な言葉を推奨し寄せ集めたものが

吹き飛んでしまうほど、

結果的に努力と天才と運があったとされる人でさえ、

長く悶々とした日々を過ごしていた事実は興味深い。

物理の計算式に限らず、

今、取り組んでいる事が思うようにいかない人達は

大いに励まされることだろう。