だが、りなさんは自信に満ちた微笑をたたえていた。
「だからね、アンタ狛犬やんなさい!」
ナニ?
犬神は顔をあげ、おれは軽く混乱した。
「へ?」
りなさんは続ける。
「近所の神社でね、カラッポのとこがあるの。
ウチとちがって社はあっても中に神様もいないし狛犬もヌケガラ。だから、そこで狛犬やんなさい。」
ダガワレハ呪ウコトシカ・・・。
犬の表情には詳しくないが、犬神は困っているように見えた。
りなさんは、優しく諭すように話す。
「そうね、攻撃することしかできない。
だから、邪なモノに対してその力をお使いなさい。
訪れる人の思いが歪んでいるなら、その歪みだけを喰らえばいい。
近くに悪しき気配があれば遠慮なく攻撃すればいい。
どう?あなたにもできそうでしょ?」
神の采配。
オオ・・・オ・・・オォーーーーン!
いきなりの遠吠えに、俺は思いっきりびびった。
だけど、その声はやる気にあふれた頼もしいものだった。
「じゃ、ヨシアキも一緒にきてね。」
なんでだろう。
嫌だと言い出せず、っていうかどうも逆らえないのは、りなさんが本物の神様だからなのか?
りなさんと出会った神社とは反対方向に、かなり歩くことになった。
神社どころか、近所に人気もあまりない場所。
「ここを住処にするといいわ。」
りなさんは、所々削れ始めてきている古そうな狛犬を手で軽く叩きながらそう言った。
「ウチの子たちには、この辺を新しくあなたに任せた事をきちんと話しておくから、しっかり守って。
手に負えないことがあったら、この前の神社に来なさい。
・・・ウチの子に吠え掛かったり噛んだりしちゃ、ダメよ?」
承知シタ。
言うなり犬神は狛犬に飛びかかり、ぶつかると思った瞬間姿を消した。
「中に入ったのか?」
「そうね。いきましょ?」
最初から決まっていたような口ぶりで、りなさんは歩き出した。
「え、っと、どこへ?」
振り回されてる・・・。
別に迷惑はかけられてないんだけど、そう感じた。
「最初に会った、あの神社。」
「あ・・・りなさんて、もしかしてあの神社の」
答えずに、けれどそれが正解だと認める顔で、りなさんは笑っていた。