瞬間、タマの姿は残像のように不確かになり、手の感触も消える。
それもほんの刹那で、すぐにタマをなでていた手は何かに当たって押し返された。
おれの目の前に、もうあの小さな女の子はいない。
かわりに立っていたのは、17・8歳くらいの女の子。
つり上がっているのにくりっと丸い目といい、ふだんから笑みをふくんで見える口元といい、やや丸みをおびた輪郭といい、タマが大きくなった姿に違いなかった。
それが、ポスターとまるっきり同じ水着で目の前に立っている。
胸は大きく、腰はくびれ、白い肌は真珠のように奥深い艶をたたえまぶしい。
中学生には目の毒な光景だった。
おれは、目をそらした。
だって、相手はタマなんだ。
「タマ、・・・化けたの?」
「ちがーうもーん。
オトナに、へーんしーん、だもん。」
タマは女の子向けの変身美少女アニメが大好きで、着替えでもお化粧でも、見た目が変われば彼女にとっては“変身”だった。
「そう、でもとにかくやめて?」
なんとか優しい言葉でなだめてみる。
「なんで?こーゆーのスキなんでしょっ?」
無邪気に笑いながら飛びついてきた。
「うわ」
勢いが強くてよろけた拍子に、タマの体に手がかかる。
「ぉ・・・っとぉ。」
片手は背中に回ったが、もう片方の手はお尻を押さえてしまった。
両手に、素肌の感触。
どうやらポスターでは見えない水着の後ろ側を想像した結果、ヒモパンの紐部分そのままだと思ったらしく、Tバック状態になっていた。
「あぁっ、うあ、ごめん!」
すぐに手を離すが、最早おれは大パニックで何も考えられない。
ほとんど裸みたいな女の子に抱きつかれて、中学生男子が冷静でいられるだろうか?
タマはおれの頭の中などわかっていない顔で、
「なにが?」
と、首をかしげる。
「あっ・・・え、とっにかくっ、離れぇっ。・・・元に戻れよ!」
どう言ったらいいかわからなくて、自分自身にも苛立って、口調が荒くなった。
タマは眉をひそめる。
「なーんでー?」
「・・・ぼくはっ」
おれは、言葉につまった。
なんでいけないんだろう。
どういえばいいんだろう。
もちろん、妹みたいに思ってるタマにこんなことされても、困ってしまうだけだから。
だけどこの時のおれは本当に焦っていて、すぐにそれが出てこなかった。
絶句したままオロオロするだけのおれに、タマはさらに迫ってくる。
「えっちなこと、しよ。」
「はァ?!」
おれは大きな声をあげた。
バカ言ってんじゃない、という意味合いをこめたつもりだったが、その声は裏返ってしまっていた。
「だってヨシアキ、えっちなおんなのこがスキなんでしょ?」
ポスターのことを言っているらしかった。