ただ意地悪なだけなら、いくら幼馴染でも親友なんかやってられない。
だけど、やっぱり意地の悪い所はしっかりあるわけで。
「何だよ、じゃ男がいいのか?」
中途半端な真顔でこんなことを言う。
かと言って本気で疑われている可能性もないではなかった。
おれは、これ以上ないくらいあわてた。
自分の名誉と親友を、いっぺんに無くすかもしれない。
まぎれもないピンチだった。
「そんなわけないじゃん、よ、よこせよっ!」
おれは、同性愛といわれるより、ちょっとくらいスケベな奴と思われる方がマシに思え、それを選択した。
さらに念のため、背伸びして荒っぽい言葉を使ってみる。
ポスターをひったくると、しょーちゃんはまたニヤニヤ笑いに戻った。
「貼れよ?男なら。」
「やっ、だって、おかあさんに見られたら」
いやらしい子だと思われる。
親からの目は、また別の話だ。
大人になってから考えれば、水着のポスターくらい可愛いもんだと思うが、その時のおれにとってはすごく恥ずかしかった。
言い訳を、しょーちゃんが遮る。
「そーやって母親をいちいち気にすんのもガキなんだよな、お前。」
冷めた視線が痛い。
「・・・わかったよ。貼ればいいんでしょ?」
不服ながらも、しょーちゃんにバカにされたくなくて、おれは従うことにした。
「確かめにいくから、絶対貼っとけよな。」
そう言って、しょーちゃんはひときわ楽しそうに笑った。
「わかったって、もー別の話しよ。
あ、そうださっきの・・・」
だけど、ちょっとえっちなポスターを見られていけないのは、母親だけではなかった。
「ヨシアキー、これだれ?」
約束なのでしぶしぶ貼ったポスターを、下からタマがまん丸な目で見つめていた。
「あ・・・アイドル。」
あまり触れてほしくなくて、おれは言葉を濁す。
「アイドルって?」
タマは無邪気に質問してくるが、その普段とかわらない様子がまた気まずい。
「え・・・と、かわいい子のことだよ。」
簡単に説明する。
タマは、ふーん、と一度ポスターから目をそらし考える。
自分なりに意味をかみくだいているのだろう。
すぐに顔を上げたタマが、おれを見た。
「じゃ、タマもアイドル?」
期待感いっぱいに訊かれ、否定できない。
小さな頭に手をのせ、つやつやした黒髪をなでてやる。
「・・・かもね。かわいいもんね。」
タマは満足そうに微笑んだ。
それから、あの後ろめたいポスターの方を向くと、
「じゃ、タマもあれする。」
と言った。