夕方まで斯波家で遊んだヨシアキが、ショウリの母に呼ばれて食卓につく。

 「わぁ、おいなりさーん!」

 と、ヨシアキ。

 「おーっ、カラアゲー!」

 と、ショウリ。

 キリコは台所から、タマゴサラダの乗った皿を持ってやってくる。

 「アタシも手伝ったんだよ、おいなりさん。」

 ヨシアキに笑いかける。

 「えぇ?キリコちゃんすごいね。」

 ヨシアキも笑顔でキリコをほめたが、ショウリはそれが気に入らない様子で

 「女なんだからあったりめーだろ。」

 と抜かし、皿を置いたキリコにぶん殴られた。

 さらにキリコはショウリを罵る。

 「ざけんなよショウリ!

 アンタじゃなくてヨシアキくんが弟ならよかったのに!」

 ショウリも言い返す。

 「はー?オレだってヨシアキが兄弟だったらよかったぜ!

 何でも言うこと聞くもん、なー?」

 急に肩を組まれてヨシアキは戸惑う。

 「え、あー、う、うん。」

 何でも、って子分じゃないんだから。

 少し不満に思いながらも、うなずいてしまう自分が情けないヨシアキだった。

 ケンカがおっぱじまりそうな雰囲気に、ショウリ達の母が口を出す。

 「こーら、ケンカしたらヨシアキくん困るでしょ?やめやめ!」

 ね、と優しく微笑まれ、ヨシアキは内心ホッとした。

 ばぁちゃんが話しかけてくる。

 「ヨシアキちゃん、おいなりさん少し持っていきな。

 これも、油揚げでできてるんだよ。」

 ヨシアキとショウリの声が重なる。

 「えーっ、そうなのぉ?」

 キリコが得意げにそこへかぶせる。

 「そー。あまからく煮た油揚げにゴハンつめるの。」

 「色んな具を入れたから、沢山食べてねヨシアキくん。」

 ショウリ達の母も、そう言って笑った。

 夕食の後、家まで送ってもらって帰ってきたヨシアキは、すぐ部屋に戻るとタマを呼んだ。

 「タマー、遅くなってごめんね。」

 親が入ってきても大丈夫なように、空気になりすましていたタマがその声で瞬時に実体化する。

 「おそーいよーっ」

 と同時に、ヨシアキの首に腕を回して抱きつく。

 「ごめんって。それよりね、オミヤゲあるからいったん放して。」

 「なにー?」

 手を放したタマは、にこにこと笑うヨシアキの手の中の包みをみつける。

 ヨシアキは彼女の目の前でそれを開けてやった。

 イラストのついた可愛い小さなタッパー。

 ふたをとると、茶色くてりてりと輝きを放つおいなりさんが二つ、姿を現した。

 甘いニオイが、タマの鼻をくすぐる。

 ふんふんと鼻をひくつかせる。

 「なにー、これ。いーニオイ。」

 「食べてみて。今度こそきっと好きなやつだから。」

 「うん。」

 タマは喜んでかぶりつく。

 「あまーい、おいしー!」

 手ごたえ充分の笑顔に、ヨシアキも嬉しくなる。

 「これ、好き?」

 ヨシアキが聞くと、タマはためらいなく答えた。

 「うん、ダイスキー。」

 「どのくらい好き?」

 「ヨシアキとおなじくらいスキッ。」

 言いながらタマはヨシアキに抱きついた。

 おいなりさんの汁がベッタリついた手で。

 「タマっ、服が・・・あぁ。」

 ヨシアキは慌てたが、すぐに手遅れに気付き、諦めてタマを抱きしめてやった。

   ◆

 「おれが最初に作った料理って、何だか覚えてる?」

 ヨシアキはもと居た場所に座ると、ショウリに言った。

 ショウリはもぐもぐと口を動かしながら考える。

 「・・・そんな話したことあったか?」

 ヨシアキは懐かしそうに笑って、答えた。

 「おいなりさん。」