妄想タイム
お客さんとの打ち合わせで、会社の最寄り駅にある喫茶店に来た
今日も暑くて体がついていきませんね、という会話をしていたとき、太陽が元気だったのに
お客さんを駅までお見送りするころには、グレーの雲が下がり、雨がポツポツ落ちてきた
ありゃー、やられた、どうしよっかな
普段なら折りたたみ傘を持ち歩いてるのに、打ち合わせだからと荷物減らしたんだった
なんてあれやこれやと困ってるうちに雨は大粒になっていた
雨宿りしたいけど、時間的にそういう訳にもいかず
さぁ、走るぞー!と濡れるのを覚悟で駅を飛び出そうとした瞬間
【ちょっと待て待て!】
肩を掴まれた
『ハッ!ビックリした!なんで?』
振り返ったら、既婚者の元カレが居た
【俺だって、ときにはこの駅使うから】
【これから会社戻るとこ?】
うん
【で、雨の中走ろうって思ったの?】
うん
【濡れたらダメだろ、お前の色気が流れ出ちゃう(笑)】
ナニ言ってんだか
【会社まで送るから入って】と傘を開きながら、彼は急に真面目な顔をして歩き始めた
会社近くの交差点に差し掛かるタイミングで、突然雨が強くなった
ふぅー、傘なしで走らなくて良かった
そう思っているタイミングで、元カレも【俺に見つけてもらえてラッキーだったな!】と偉そうに言ってきた
『よく気付いたよね?あの時間帯の駅って結構人多いのに』と、何気なく質問をぶつけた
…
返答なし
雨の音で私の声がかき消されて、聞こえなかったパターンかな
そんなこともあるさ
…
念のため会社の入る隣のビルに入った、誰が何処から見てるか分からない
【少し濡れちゃったな、もっと近付いてくれても良かったのに】
彼はさっとミニタオルを鞄から取り出し、私の肩を拭いた
『いつも優しいね』
【俺はいつでも優しくしてあげたいと思ってるからな】
『私は、拭いてあげられなくてゴメンね』
【フフッ、じゃあ○○に拭いてもらってると想像しとくよ】
彼は私を見つめながら、自分で肩を拭いていた
【さっきの質問だけど、改札口で誰かにお辞儀してたろ、その横を通ったから、俺】
あぁ、あのとき…
【話しかけるつもりは無かった、けど、雨の中を飛び出していくじゃじゃ馬を見たら、身体が動いたよ(笑)】
【じゃ、行くね】
お互い手を振るわけでもなく、彼の方を振り返るわけでもなく、あっさりと離れた
電話で別れ話をしてから顔を合わすことは無かったけど、この懐かしく想う気持ちを持ちながら会社に戻るのは、想像よりもキツイ
会社に戻れば今カレがいて、笑顔で【お帰りなさい】と迎えてくれるだろう
何もなかった顔ができるかな?
出来る、私なら出来る、出来るはず
続く
