XenonとULTRON(クセノンとウルトロン)高解像度の系譜 | シネレンズとオールドレンズで遊ぶ!

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カメラマンヨッピーのブログ。シネレンズやオールドレンズなどのマニュアルフォーカスレンズをミラーレスカメラに装着して遊び、試写を載せていきます。カメラ界でまことしやかに語られているうわさも再考察していきます。



A.Wトロニエ博士によって設計されたXenonとULTRONこの2本を中心に試写してみたいと思う。
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1920年にガウスタイプレンズの可能性を開いたOPICが現れた。このレンズによりPlanarの発明以後、トリプレットにおされて忘れ去られていたガウスタイプの歴史が再び動き出す。

この可能性に光明を見出したレンズ設計者の一人がA.Wトロニエである。

シュナイダーに在籍していたトロニエは1925年に4郡6枚のOPIC型ガウスタイプレンズを発明した。そのレンズはXenonとしてごく少数発売された。その後第2群の貼合を分割した5群6枚の変形ガウスタイプレンズを発明する。

今回紹介するXenonはこの時代のXenonである。
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Xenon 5cmF2 シリアルから1938年に生産された戦前型であることがわかる。


その後トロニエ博士はVoightlanderに移籍して同社のレンズを数多く設計する。

カラースコパーやスコパロン、カラーヘリアー、アポランター、ディナロンなどフォクトレンダーの伝統的なレンズを踏襲するレンズを設計する一方、全く新しいレンズも設計する。

それがウルトロンとノクトンである。

50mmF2と50mmF1.5いずれもトロニエ博士のライフワークというべきレンズである。

シュナイダー時代のXenonの発展型としてのULTRON、同じくシュナイダー時代のLeitzXenonのリベンジであるNOKTON。50代にさしかかろうとしていたトロニエ博士はレンズ設計者としての集大成として、どうしてもこの2本のレンズを手がけたかったのではないだろうか?
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ULTRON50mmF2 シルバーの美しい鏡胴。ドイツの古き良きクラフトマンシップを体現したレンズである。



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レンズ構成もほぼ同じこの2本はどんな進化を遂げているのか?


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まずはXenon 5cm F2から行きます。
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少しハレっぽさはありますが解像力はかなりのものです。
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意外と発色はこってりです。
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自然でしっかりした描写です。
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開放値はF2で、撮影時の絞りはF2.8ですが、ピント面はとても薄いです。


次にULTRONの写りです。
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ヌケは非常に似ています。
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寄りでは、ハレ感はなくなり発色もメリハリがあります。
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ボケなどはほぼ同じです。
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発色はやはり改善しているようです。


例によって比較してみました。

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改めて見ると差らしい差を見つけることができません。

クセノンからウルトロンにかけて大幅な設計変更がなかったのは、クセノンの設計がかなり完成に近かったからではないかと推測されます。


少し意地悪をしてあえて差が出るようなシチュエーションを作ってみました。


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ULTRONは逆光条件でもコントラストと解像力は落ちません。
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Xenonはコマフレアが処理されてないためハロによるフレアが発生します。
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素晴らしいコントラストです。
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やはりコマフレアのハードルが立ちはだかります。

ガウスタイプのp¥コマフレアの処理が確立するのは戦後の1950年代になります。

ULTRONも完璧とは言えませんが、かなり処理に成功しているようです。

日本においてはULTRONと同年に発売されたキャノン セレナー50mmF1.8がコマフレア退治に成功したレンズとして有名です。


トロニエ博士は技術の限界により結果を出すことができなかったXenonレンズの潜在能力をコーティング技術と新しい設計理論によりULTRONとして生まれ変わらせることに成功したのであろうとおもわれる。