久しぶりに本屋でブラブラする時間があった。
黄色いキューブが描かれた印象的な文庫を手に取った。
ガストン・ルルーの小説『黄色い部屋の謎』。創元推理文庫である。
「密室ミステリの古典」とある。
ふーん、そうなんだっけ?知らなかった。
それが四十路になってこの本を手に取ったときの私の感想。
子供の頃にミステリ好きで、少なからずミステリ小説を読んでいた、という経歴を一応書き記しておこう。
この小説の説明はウィキペディアに頼ろう。
『黄色い部屋の秘密』(きいろいへやのひみつ、原題:Le Mystère de la chambre jaune)は、ガストン・ルルー作の推理小説。『黄色い部屋の謎』とも。1907年にフランスの週刊挿絵入り新聞『イリュストラシオン』で連載され、1908年に発刊された。
密室トリックを扱った古典的作品として知られる。続編として『黒衣夫人の香り』が存在する。ポプラ社のジュニア世界ミステリーシリーズでは「密室の怪事件」として1968年に発刊されている。
「黄色い部屋の秘密」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 2022年2月21日 (月) 03:08 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org
百年以上前に書かれた小説。
フランスを舞台していることもあり、さらりと城が出てくる。もちろん、妄想が加速されてそこが良いのだが。
ウィキペディアに書かれているように、日本では翻訳の際に複数のタイトルで出版されているらしい。
『黄色い部屋の秘密』にするか『黄色い部屋の謎』にするか。
読了してしまった身としては、何をフォーカスするかによって変わるのだろうと思う。
個人的には『~謎』にした方が購買意欲は高まるのだが、『~秘密』の方が奥深いなぁと思う。
話は戻って、私が『黄色い部屋の謎』を買ったところから。
とりあえず、すき間時間に読み始めた。
夢中になって読んだ。
仕事を疎かにできないので、早朝に読もうと思うと、朝が弱いのに起きることができた。
振り返ってみれば、フィクションを読むこと自体が久しぶりなのである。
子供の頃にワクワクしてページをめくる手が止まらず読み続けた、あの感覚が蘇ってきた。
あー、ミステリって素晴らしい!
と、思って軽々しくもハッピーな気分になっていたところ…
あれ?私、このトリックわかるかも。
既視感に襲われたのである。
これは、悲しいかな、私の頭が冴えていてトリックを見破ったのでは、ない!
元々、知っていたのである。
なんでだろう?
この小説、初めて読むはずなのに。
子供の頃に「世界名探偵全集」のようなネーミングで古今東西の名探偵を紹介するような本を読んでいたから、その中にトリックのさわりが書いてあったのかもしれない。
小説はまだ前半部分だったこともあり、このときの私はそう思って読み進めていった。
しかしである、後半のトリックに関しても私はわかったのである。
これは、まさか、読んだことある!?
しかし、うちの本棚にはない。引っ越しのときに本を手放したか?
けれど、こんなにまるっと読んだことがあること自体、忘れてしまうものかしら?
もう読み進めていく理由がトリックを解きたいからではなく、自分が過去に読んだことがあるのかどうかハッキリ見極めたいからに変わっていた。
そして、最後のページを読んだときに、ハッキリと自覚した。
読んだことあるわ!
この小説の密室トリックが面白いというのは、この作品を評価するときの最大のポイントだと思うけれど、最終ページに描かれている別の要素が、この作品を味わい深くしている。
トリックとは関係ないその要素を覚えていたことで、私は以前にもこの作品を読んだことがあると確信した。
しかし、一体、どこで読んだのか?
手元に本がないことを考えると、学生の頃に図書館で借りて読んだのか。
四十路になって健康診断の項目が増えたことで、気持ちがちょっと沈んでいたが、以前読んだ名作をまるで初めて読むかのように楽しんで読めるようになったことは幸せなことかもしれない。
ミステリ小説はトリックを知ってしまうと、読書二週目は触手が動かない、となることはよくあると思う。
しかし、数十年の時を経たら、また違いますよ、と。
今回、それを私はおすすめしたい。
さて、ウィキペディアにあるように、『黄色い部屋の謎』には『黒衣婦人の香り』という続編が存在する。
それは今回、初めて知った。…と思う。
『黒衣婦人の香り』、読みます。