タイトルをどうするか悩んだ。

読んでいたのはガストン・ルルーの『黒衣婦人の香り』。創元推理文庫である。

 

読書にまとまった時間を割けず、すきま時間に少しずつ読み進めることになったのだけど、とても面白かった。

そこから、すきま時間に細切れの読書を重ねることになっても、ストーリーを見失わずに楽しめる小説とはどんな特徴があるのかっていうことを書きたいと思ったのだけど。

「細切れ」って書いたら、お肉のこま切れ肉を連想させるんじゃないかと思って、しばらく逡巡。

結局、上記のように落ち着きました。

 

実際の細切れ読書がどんな感じだったかというと…

10分空く!なら2、3ページ読み進めよう!という感じ。

そう、私は読むのが遅い。

一冊で長く楽しめるのだからお得だと思っておこう。

 

本題に入る前に。

今回読んだ『黒衣婦人の香り』は同じ作者の『黄色い部屋の謎』の続編であるということをお知らせしておかないといけない。

Wikipediaにも本書の解説にもしっかりと書いてあるのだが、表紙を見るだけではわからない。

うちにはやっとひらがなが読めるようになった我が子がいるのだが、将来、本棚からうっかり『黒衣婦人の香り』を先に手に取ってしまわないか心配である。

皆様はどうぞ『黄色い部屋の謎』を読んでから『黒衣婦人の香り』をお読み下さい。

 

ちなみに、私の『黄色い部屋の謎』についての読書談は、こちらをどうぞ。

 

 

そして、本題『黒衣婦人の香り』!

舞台は地中海に突き出すヘラクレス半島に建つ古城「ヘラクレス砦」。

また古城が出てきたよ。前回よりもスケールがダイナミック。

私にとって古城は非日常。読書するだけで別世界に連れて行ってくれる。

日常と続いていない世界観だからこそ、ページをめくるだけで頭の切り替えがスムーズにできた。

 

メインの登場人物は前作と同じ。

新しく出てきた登場人物も個性豊かですぐに覚えられた。人数も多くない。

なので、細切れ読書になっても、君は誰だったけ?とはならなかった。

 

前作でも古城内の図面が出てきていたが、今回もヘラクレス砦内の図面があるので、誰がどこにいるのかわかりやすい。

誰がどこにいるのか、誰が出て行ったのかを把握していれば細切れ読書でも読み進められる!

ミステリに対してこう書いてしまうと、身も蓋もない感じがするが。

いやいや、登場人物の居場所を把握しているからこそ、彼、彼女たちの会話や心模様を楽しむ、ということができるのですよ。

驚きのトリックと同時に、人間模様を感じられるところが前作同様に魅力でした。

 

まとめると。

 

登場人物が多くなく覚えやすい

登場人物がどこにいるかわかりやすい

非日常の世界観

我ながらお粗末な考察になったもんだが。

他にも細切れ読書に耐えうる小説はあるだろうか。

人生に彩を与えてくれる小説に出会えて幸せだ。

 

これだけ書いておいてなんだけど、フィクションを細切れで読むっていうことを、積極的にはしたくない。細切れ読書に向かない小説の方が圧倒的に多いだろうし。

ただ、忙しい時ほど、読書する時間を少しでも持てると、毎日の生活の推進力になる気がするんだよね。

 

 

あ、あとね。

実は『黒衣婦人の香り』終盤では読む手を止められず、あろうことか睡眠時間を削って読了を果たすという、愚行を犯してしまった。

もう若くないんだから、体力回復するまで時間かかるのに。

それだけ、『黒衣婦人の香り』の終盤の展開には惹きつけられたということ。

 

最後に『黒衣婦人の香り』のイメージで画像を一枚。