The Kinks
『singles collection』


 「英国4大バンド」というのを知っていますか?誰が言い出したのかわかりませんが、ロック関係の本やネットの記事で何度も見かけたことがあるので、多分一般的なものなんだと思います。

 肝心の4バンドは何か。まずはビートルズ。まあそうでしょうね。次にローリング・ストーンズ。3つめがフー。フーあたりになるとロックファン以外には怪しくなってきます。ちなみにここまでの3バンドで「英国3大バンド」と括ることもあるそうです。

 そして最後にくるのが、キンクスです。順番からもわかるように、日本での知名度は残念ながら一番低い。しかし楽曲の素晴らしさ、オリジナリティ、後進に与えた影響は他の3バンドに引けを取りません。数々のトリビュートアルバムも作られていて、日本でもコレクターズやチバユウスケが参加したアルバムが作られています。僕の知り合いのイギリス人(僕と同年代)も「キンクスが一番好きだ」と言っていました。

 キンクスの魅力は、ジャリッと砂を噛んだような、ワイルドなサウンドです。彼らのデビュー曲は、リトル・リチャードの<Long Tall Sally>。ビートルズのカバーが有名ですが、ビートルズ版と聞き比べると、キンクスのキャラクターがよくわかります。ポール・マッカートニーのようにシャウトはせず、いかにも適当な感じで歌っています。テンポもビートルズに比べるとだいぶ遅い。まるで紙くずをゴミ箱に放り投げるような雑な感じがとてもクールです。

 ストーンズやフーも相当にワイルドですが、サウンドだけを見れば、僕はキンクスが一番不良っぽいと思います。ウソかホントかわからない(ロックにありがちな)「伝説」ですが、デビュー当時、キンクスはギターの音を歪ませるために、アンプをカミソリでズタズタに切り裂いたそうです。アンプを切り裂くと本当に音が歪むのか、真偽はさておき、確かに彼らのロックには、そういうジャリジャリっとした“苦さ”のようなものを感じます。

 しかし、彼らの不思議なところは、そういうデカダンス的なところがありながら、なぜか「品」があるところです。彼らはキャリアの中期以降、相当に凝ったコンセプチュアルなアルバムばかりを作るようになります。彼らは音楽的な探究心よりも、シュールな物語やペーソスをいかに音楽に盛り込むかという、知的な好奇心に満ちたバンドでした。ワイルドと書きましたが、彼らの場合はマッチョ的なそれではなく、「毒」「風刺」といったクールなワイルドさです。4大バンドの中で、僕ら日本人が持つ「イギリス人」というイメージに一番近いのがキンクスかもしれません。

 なので、アルバム単位で見るとかなりムラがあるので、キンクスを最初に聞くならベスト盤から入るのがオススメです。中期以降のコンセプトアルバムを最初に聞くと、かなり面食らうかもしれません。2008年、60年代のシングル曲を全部集めたベスト盤『singles collection』がリリースされました。ボーカルのレイ・デイヴィス自身がプロデュースをしています。キンクスの絶頂期の楽曲が20曲以上収録されているというかなりお得な一枚で、キンクスへの入り口としては最適な一枚です。