ヘビィにしてクール

そしてキュートなガールズバンド・ヌードルズ

ヌードルズに出会ったのはもう4,5年前になるのだけれど、もう最初に聴いた1曲目からずっと僕は彼女たちに恋してる。バンド名からなんとなく想像がつくかもしれないが、オルタナ志向の強いバンドで、サウンドはすごくヘビィ。ガールズバンドにありがちな“媚び”がない、とてもクールなバンドだ。

メンバーはYOKO(ボーカル&ギター)、IKUNO(ベース)、AYUMI(ドラム)。結成は1991年なので、キャリアはかなり長い。実は元々は4人編成(もう1人はギター)で、04年に3人になった。

僕が最初に買った『GOD CABLE』は4人時代の最後のフルアルバムで、今よりもスケールの大きな楽曲が多く、あえて悪く言えばちょっと欲張っている感じもあった(もちろん大好きなアルバムなのだけど)。

だが、3人になったことが、逆にヌードルズに進化をもたらす。良い意味で音が軽くなってバラつきがなくなり、ギュッと凝縮されたような曲が多くなった。3人になって最初のアルバム『ivy』は、『GOD CABLE』以上にロックで、且つポップな仕上がりになっている。

その後『Cover me Shakespeare』を挟んで、この『METROPOLIS』である。全11曲というボリュームを持ちながらも、ものすごい疾走感が感じられるアルバムだ。とにかくギター、ベース、ドラムの一体感が気持ちいい。3つの音がひとつの塊になって突き進んでいるよう。

この一体感や凝縮感は円熟味などではなく、むしろ若さや純粋さを感じさせる。キャリア18年。“ロック”という重力芯によって攪拌され、余分なぜい肉が削ぎ落とさたバンドが奏でるピュアなサウンド、それがこの『METROPOLICE』だ。

ヌードルズは英語詞の曲が多いのも特徴。『METROPOLICE』でも4曲が英語詞である。ボーカルYOKOの歌う英語はかなり舌足らずなのだけれど、それが妙にしっくりくるから不思議だ。

そもそも彼女の歌声は、シャウトはおろか声を張ったりするところがなく、喋り声に近い。普通の女の子の声が、ギターやドラムの重い音の上に乗っかって、不安定になるかと思いきや、その点も絶妙なバランスでしっくりしてしまうのである。

“喋り声ボーカル”というとパッと思いつくのは元スーパーカーのフルカワミキ。ただし、フルカワミキの場合は彼女の声が周りから浮いているところ、つまりサウンドと「しっくりこない」ところが魅力だった。それゆえ、フルカワのボーカルは物憂げでどこか心細さのある空気感が持ち味だったが、YOKOの場合はその逆。サウンドと寄り添いながらあくまでポジティブで可愛く、それでいて喋り声だから居心地のよさを聴く者に与えるのだ。

現在ヌードルズが所属する「デリシャス・レーベル」のレーベルオーナーはthe pillowsの山中さわお。彼の、ロックとポップにオルタナをまぶしたようなセンスが好きな人は、ヌードルズもきっと気に入るはず。

 実はこの後に出した『SNAP』というミニアルバムが2009年1月時点でのヌードルズの最新アルバムになるのだが、こちらは若干ハードな手触りのアルバムなので、最初にヌードルズに入るならこの『METROPOLICE』がポップでおすすめである。
女の子3人によるロックバンド、ヌードルズが2007年にリリースしたアルバム。