朝。

 まだ陽が完全に昇りきる前の、淡い青と金色が混ざった時間。



 外に出た瞬間、空気の匂いが違うと感じた。

 鼻をくすぐる湿った土のにおい。

 夜露の残る草の香り。

 空気が肌にまとわりつくように重いけど、それを切り裂くように吹く一瞬の風が、心の奥まで透き通る。



 ああ……これが“外”か。

 ほんのり汗ばむほどの湿度。

 だけど、頬を撫でていく風が気持ちいい。

 その風の中には、焼き木の香りとか、草の汁のような青臭さとか、いろんな匂いが溶けている。



 カズが帰っていった次の日。

 私は、生まれて初めて、家の外に出た。




 考えてみれば、生まれてからもう何か月も経っているのに、一度も外に出たことがなかった。

 家の中の天井と、窓から差す光しか知らなかった。



 外って、こういう感じなんだ……。




 見上げれば、雲が薄く流れていく。

 木々の枝が重なって、葉の隙間から光がちらちら揺れる。

 鳥の鳴き声がして、遠くの方では木を割る音。

 世界は、ずっとこんなにも“音だらけ”だったんだな。



 眩しくて、広くて、音がたくさんあって。

 ちょっと、怖いけど、前世でも経験してるはずの”光”や”音”がこんなにも自分をわくわくさせるものだとは知らなかった。

 私……心が死んでたな。きっと。




 あの夜以来、パパは嘘みたいに元気になった。

 体の色艶が戻って、目の下の影も消えて。

 ベッドから起き上がるだけで息を切らしていたのが、今は朝、ママと同じ時間に起きて、身支度までしてる。





「久しぶりに…。外で体、動かすか。」

 そう言って、パパが腕を軽く回す。

 パパが体を動かすたび、筋肉がきしむ音が聞こえるような気がした。

 いや、音なんてしてないんだけど……生命力みたいなのがにじみ出ている気がする。



 ママが少し眉をひそめる。

「体調、大丈夫?」



 その問いに、パパは小さく笑って答えた。

「問題ない。」

 短いけど、その声には力が戻っていた。



 そのやり取りだけで、ママの顔がやわらいだ。

「サクラも連れて行きましょ。」

 そう言って、私を抱き上げる。

 その手が温かい。少し汗ばんでるけど、それがなんだか“生きてる温度”って感じで心地よい。



 3人で外へ出る。

 朝食前の外出なんて、どんな用事なんだろう。

 ママは毎朝出てたけど、ついて行くのは初めてだ。



 私の頭の中では朝ごはんが”一日の最初の儀式”という印象があったから、その前に外へ出るのが少し不思議だった。






 外に出て最初に目に入ったのは、


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7―①:三人で歩く“朝の外”――竜を討つ者の、目覚め