◇
朝。
まだ陽が完全に昇りきる前の、淡い青と金色が混ざった時間。
外に出た瞬間、空気の匂いが違うと感じた。
鼻をくすぐる湿った土のにおい。
夜露の残る草の香り。
空気が肌にまとわりつくように重いけど、それを切り裂くように吹く一瞬の風が、心の奥まで透き通る。
ああ……これが“外”か。
ほんのり汗ばむほどの湿度。
だけど、頬を撫でていく風が気持ちいい。
その風の中には、焼き木の香りとか、草の汁のような青臭さとか、いろんな匂いが溶けている。
カズが帰っていった次の日。
私は、生まれて初めて、家の外に出た。
考えてみれば、生まれてからもう何か月も経っているのに、一度も外に出たことがなかった。
家の中の天井と、窓から差す光しか知らなかった。
外って、こういう感じなんだ……。
見上げれば、雲が薄く流れていく。
木々の枝が重なって、葉の隙間から光がちらちら揺れる。
鳥の鳴き声がして、遠くの方では木を割る音。
世界は、ずっとこんなにも“音だらけ”だったんだな。
眩しくて、広くて、音がたくさんあって。
ちょっと、怖いけど、前世でも経験してるはずの”光”や”音”がこんなにも自分をわくわくさせるものだとは知らなかった。
私……心が死んでたな。きっと。
あの夜以来、パパは嘘みたいに元気になった。
体の色艶が戻って、目の下の影も消えて。
ベッドから起き上がるだけで息を切らしていたのが、今は朝、ママと同じ時間に起きて、身支度までしてる。
「久しぶりに…。外で体、動かすか。」
そう言って、パパが腕を軽く回す。
パパが体を動かすたび、筋肉がきしむ音が聞こえるような気がした。
いや、音なんてしてないんだけど……生命力みたいなのがにじみ出ている気がする。
ママが少し眉をひそめる。
「体調、大丈夫?」
その問いに、パパは小さく笑って答えた。
「問題ない。」
短いけど、その声には力が戻っていた。
そのやり取りだけで、ママの顔がやわらいだ。
「サクラも連れて行きましょ。」
そう言って、私を抱き上げる。
その手が温かい。少し汗ばんでるけど、それがなんだか“生きてる温度”って感じで心地よい。
3人で外へ出る。
朝食前の外出なんて、どんな用事なんだろう。
ママは毎朝出てたけど、ついて行くのは初めてだ。
私の頭の中では朝ごはんが”一日の最初の儀式”という印象があったから、その前に外へ出るのが少し不思議だった。
外に出て最初に目に入ったのは、
========
続きはカクヨムで↓↓↓
7―①:三人で歩く“朝の外”――竜を討つ者の、目覚め
朝。
まだ陽が完全に昇りきる前の、淡い青と金色が混ざった時間。
外に出た瞬間、空気の匂いが違うと感じた。
鼻をくすぐる湿った土のにおい。
夜露の残る草の香り。
空気が肌にまとわりつくように重いけど、それを切り裂くように吹く一瞬の風が、心の奥まで透き通る。
ああ……これが“外”か。
ほんのり汗ばむほどの湿度。
だけど、頬を撫でていく風が気持ちいい。
その風の中には、焼き木の香りとか、草の汁のような青臭さとか、いろんな匂いが溶けている。
カズが帰っていった次の日。
私は、生まれて初めて、家の外に出た。
考えてみれば、生まれてからもう何か月も経っているのに、一度も外に出たことがなかった。
家の中の天井と、窓から差す光しか知らなかった。
外って、こういう感じなんだ……。
見上げれば、雲が薄く流れていく。
木々の枝が重なって、葉の隙間から光がちらちら揺れる。
鳥の鳴き声がして、遠くの方では木を割る音。
世界は、ずっとこんなにも“音だらけ”だったんだな。
眩しくて、広くて、音がたくさんあって。
ちょっと、怖いけど、前世でも経験してるはずの”光”や”音”がこんなにも自分をわくわくさせるものだとは知らなかった。
私……心が死んでたな。きっと。
あの夜以来、パパは嘘みたいに元気になった。
体の色艶が戻って、目の下の影も消えて。
ベッドから起き上がるだけで息を切らしていたのが、今は朝、ママと同じ時間に起きて、身支度までしてる。
「久しぶりに…。外で体、動かすか。」
そう言って、パパが腕を軽く回す。
パパが体を動かすたび、筋肉がきしむ音が聞こえるような気がした。
いや、音なんてしてないんだけど……生命力みたいなのがにじみ出ている気がする。
ママが少し眉をひそめる。
「体調、大丈夫?」
その問いに、パパは小さく笑って答えた。
「問題ない。」
短いけど、その声には力が戻っていた。
そのやり取りだけで、ママの顔がやわらいだ。
「サクラも連れて行きましょ。」
そう言って、私を抱き上げる。
その手が温かい。少し汗ばんでるけど、それがなんだか“生きてる温度”って感じで心地よい。
3人で外へ出る。
朝食前の外出なんて、どんな用事なんだろう。
ママは毎朝出てたけど、ついて行くのは初めてだ。
私の頭の中では朝ごはんが”一日の最初の儀式”という印象があったから、その前に外へ出るのが少し不思議だった。
外に出て最初に目に入ったのは、
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7―①:三人で歩く“朝の外”――竜を討つ者の、目覚め