438.トキメキの1970年代.レイスリー.ZERO.3 | マリンタワー フィリピーナと僕といつも母さん byレイスリー
隣に座った女の娘は可愛い顔をしていたが茶髪だった、今でこそ若い娘が茶髪なのは当たり前だがこの頃は珍しかった、「元スケ番かな」と思っていると「なに見てるの!」という顔をして睨まれてしまった、気の弱いワタクシは前の黒板の方に目を反らした、だが直ぐに「コツ、コツ」と指で軽く机を小突く茶髪の娘、「ン~」と横を見るとワタクシの教科書を指さしている、そして「ちょっと見せてくれる」とウィンクしながら声を掛けてきた。


どうやら教科書を忘れたようだ、席の真ん中に教科書を置くと一転ニッコリ微笑む茶髪ギャル、いや、この時代にギャルという言葉はなかったのでガールということになるが馴れ馴れしく椅子をワタクシの方に寄せてきた、プーンと香水の匂いが鼻を突くと香水に免疫のないワタクシは何だかホンワカとした気分になり匂いに釣られ「結構可愛いんでないの~」と、思ってしまうから不思議だ、授業が終わり
茶髪ガール「見せてくれてサンキュー、ねえ、ご飯一緒行こうよ!ご飯!」


ワタクシ「えっ、ご飯、まっ、まあ、いいけど、君、君の名前、何ていうの?」


茶髪ガール「へへへ、人に名前聞く前に自分の名前言うもんじゃないの?」


ワタクシ「クッ、レイスリー、レイスリーって言うんだよ」


茶髪ガール「ワタシはヒロミよ、ヒロミさまって言いなさい、さあ、行こうレイスリー!」


ワタクシ「おい、おい、呼び捨てかよ~」
ワタクシは高校卒業後に男も女も含め数多くの人に会っていくが世の中には色々な人がいる、気づかないうちに過去の多くの出会いが自分というものに影響を与え少しずつ形成されていく、また逆に人に影響を与えていく、女性と話した経験が少ないとはいえ、このヒロミという茶髪ガールもこの時まで会ったことも見た事もないタイプの一人だった、自由奔放な彼女にワタクシが惹かれていったのは必然だったかもしれない。


人は自分のない部分に惹かれる場合がよくある、ワタクシがこの時から十数年後に外国人たちに惹かれたのは日本人とまるで違う考え方や性格、その国の文化だったりした、そして一番は日本に来て金が欲しい、貧しさから脱出したいと必死に生きるバイタリティーを見たからだった、もちろん外国人全てがそうではないズルくて怠け者もたくさんいるのも事実だが、「必死に生きる」少なくとも錦糸町にいた外国人たちは嘘をつこうが人を騙そうが故郷にいる家族の為に自分の将来の為に必死に生きていた、もちろんこの頃ワタクシは外国人の事など何も解るわけはない、ただ今思うにヒロミは日本人の普通の女性と違って外国人に通じる何かを持っている女性だった。


この予備校でワタクシはヒロミを含め男女7人のグループが出来た、男友達たちは皆ヒロミに惹かれていった、高校時代と違い予備校は自分がやる気がなければいくらでもサボれてしまう、お馬鹿の集まりのCクラスでやる気無しのワタクシたちは授業をバックレてヒロミがいるときは喫茶店、いない時はパチンコに行き、予備校が休みの時は友人宅で麻雀をやった、ワタクシはこの頃から徐々にギャンブルに嵌まり始めた頃でもあった、その日ワタクシは友人の一人と一緒にパチンコ屋に来ていた、当時は椅子もなく手打ちの時代、パチンコ台の釘次第で稼げるかどうかが分かれ目となる、当然、ドシロウトのワタクシに釘が読めるわけもなく運任せで席を選ぶしかない、持ち金の3千円のうち2千円を打ち「アー、止めときゃよかった」とため息をついていると肩をトントンと叩かれた、後ろを振り向くとヒロミが立っていた、
ワタクシ「なんだヒロミかよ」


ヒロミ「何やってるの!授業も出ないで、なんだヒロミかじゃないでしょう!‘ヒロミさまでした,かでしょう!!」


ワタクシ「負けてガッカリしてるんだから、大声出すなよ~」


ヒロミ「もう負けたんでしょ、行くよ!」


ワタクシ「行くって、どこ行くの、ホ、ホ、ホ、ホテルか?」
その瞬間「バシッ」っと平手打ちを喰らったワタクシ、
ヒロミ「このボケー、100年早いんだよ!!」


ワタクシ「あっ、ス、スイマセン、ヒロミさま、でも100年経つと118歳になっちゃて何も出来ないと思うんだけどぉ」


ヒロミ「そんな事どうでもいい!!次の授業まで時間あるから、お茶行くよ、お茶!」


ワタクシ「ハ、ハイ、あっ、小金井がこのウラでやってるんだよ、ちょっと待てよ」
と友人の小金井の所に行くと5箱ほど積んでいた、小金井「あっ、ヒロミちゃん、来てたのレイスリーはん負けたんでッか?」


ワタクシ「そうだよ!!行くぞ喫茶店」


小金井「いや、この台まだ出まっせ、先に行っておくなはれ、終わったら直ぐいきまっから」
小金井はれっきとした関東人だが何故だか普段から関西弁で通していた、ワタクシとヒロミは先に喫茶店に向かった、この場所は橋を渡るとホテル街、そこを抜けると横浜でも有名な風俗街、反対の坂を登るとストリップ劇場と金が有れば抜群の環境にある予備校だった、しかし、純情を絵に描いたようなワタクシはパチンコ屋と喫茶店以外は何処にも行かなかった。

喫茶店に入ったワタクシとヒロミ、特に二人は恋人というわけではなかった、ヒロミは皆のアイドルであり何となく惹かれていたがこれまで何もする事なく毎日が過ぎ去っていた、男勝りのヒロミはドカーンと座り、煙草にマッチで火をつけて旨そうに吸い煙を「フーッ」吹き出した、そしてヒロミが口を開いた、
ヒロミ「実はねえ......」
ヒロミがワタクシに話したい事、それは......



次回に続きます、いつもご訪問頂きまして誠に有り難うございます。